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WordCamp Tokyo 2023 の運営・スポンサー・ファシリテーターそれぞれの立場からの振り返り

はい、ごめんください。コスギです。
以前から毎回参戦している、WordPress の文化祭のようなイベント、WordCamp(ワードキャンプ)Tokyo 2023 に参加した振り返り記事です。

WordPress が世に出て20年、日本の WordCamp が始まって15年、ブロックエディタがリリースされて5年という節目(WordPress 年表できてるスゴイ)に、4年ぶりのオフライン開催ということで、今回は

  • 実行委員(スポンサーチーム)としての参加
  • ストレングスファインダーを扱う企業としてのスポンサー参加
  • セッションのファシリテーターとしての参加

という3つの側面から WordCamp を見てきました。結論としては、欲張って良かったです。

それぞれの観点からの振り返り記事ですので、興味のある部分を読んでいただければ。スポンサー出展に関しては費用感も公開していますが、「条件さえ問題なければ、スポンサー参加はアリよりのアリ」です。

実行委員(オーガナイザー)としての動き方の振り返り

私は、イベントの裏方参加が大好きです。ですので、2013年に初めて WordCamp に参加してからは、ほとんど(男木島以外?)の WordCamp は実行委員として参加しています。2019年には、新潟県(長岡)で WordCamp Niigata 2019 の実行委員長もしていました。

そんなわけで、4年ぶりのオフラインイベントにも当然のように実行委員として参加しました。とはいえ今回は初めてのスポンサーチームです。1人だけ地方民なので、下っ端オブ下っ端。

やりとりは、Slack と Zoom による完全オンライン。しばらくは月イチでミーティングしつつ、やることを粛々と行いながら、開催月になったら毎週という間隔です。メンバーと会ったのは当日だけですが、何の問題もなかったですね。

今までいくつかの実行委員をやってきましたが、スポンサーチームは正直「めっちゃラク」でした。なんていうか日常業務、つまり「クライアントさんとのやりとり」とあまり大差ない感覚が強かったです。相手は企業としての都合はあるにしても、個人よりも動きが読みやすいのですよね。

今回初めて協賛していただいた企業もいらっしゃいましたが、大きな問題もなく進められたのかなと思います。

大変だったのは初期だけ

一点、何が一番大変だったかと言えば、やはり応募していただいたスポンサーの「100% GPL」のチェックでしょう。WordPress の公式コミュニティなので、ライセンスに関してはかなり厳格です。私もここはとても勉強になりました。

スポンサーチームに入るまでは、なぜそこまで 100% にこだわるのかピンときておらず、正直面倒くさいな、リスクなんじゃないのかなと思ったこともあったのですが、100% にこだわるからこそ「世界の公式コミュニティ」として続けられる軸になっていることが腑に落ちました。あくまで純粋なコミュニティ(徹底的な社会規範)ですから、理念に合わなければ他のコミュニティに行けば良いだけですし、今は WordPress 以外の選択肢も選びやすくなってますしね。

こういった理念に共感し、公式コミュニティを応援したい企業が、WordCamp を支えてくれるスポンサーです。スポンサーチームとして一番大変だったのは、こういった透明性を維持するためのタスクが初期にあることくらいでしょうか。その後はスムーズすぎて、忘れていたくらいです。

また WordCamp では、企業のスタンスが変わる可能性も十分想定しています。過去に「100% GPL」を徹底していたとしても、未来はわかりません。その逆もしかりで、「100% GPL」を選ぶことで得られる可能性を大切にすることも十分ありえます(道はちょっと厳しいかもしれませんが、公式コミュニティはいつでも歓迎してくれます)。

スポンサーチームとして意識しておいたほうが良さそうなこと

KPT的に簡単に列挙しておきます。

Keep(続けたいこと)

  • やるべきことがハッキリしていたため、作業スケジュールも立てやすかった
  • ランクごとに担当が分かれていたため、確認がスムーズだった
  • Slackでの反応が早かったため、フォローしやすかった
  • 「こういうタスク、やっていい?」を提案して実行しやすかった
  • 100% GPL チェックは Zoom をつなぎながらだとスムーズだった
  • ゴールドスポンサーは、スポンサーチーム経験者が担当できて良かった
  • スポンサー向けのTシャツをつくる必要はなく、ニーズに合わせられた
  • 週の初めにミーティングを設けていたので諸々カバーできた
  • スポンサー向けの記事で必要事項をまとめられた

Problem(課題感と解決策)

  • スポンサーへの初期の連絡では、何をどうすべきかがわからずに滞ってしまい、不信感につながったケースが少し感じられた
    → ランク担当は早めに決めておき、次回以降の WordCamp にメールのテンプレートを共有しフローを滞らせない工夫が必要
  • スポンサー特典に盲点が生まれた
    → 具体的に確認してタスク化し、他チームの関わることはリーダーを巻き込んでおく
  • 当日の受付で、スポンサーブースに立つ方の受付方法に迷った(チケット利用対象者、スピーカー、当日ボランティア、一般参加とバラバラだった)
    → 結果的に、スポンサーチームで受付した人にネームカードを渡すことができていたけれども、決めの問題
  • ブースはできる限り固めておいたほうが一般参加者から敬遠されなそう
    → もう少し「ついでに見てもらえる」動線をつくっておけると良かったものの、今回の会場的にはベストエフォートだったような。
  • スポンサー向けの記事には具体的なお願い(ブースツアーについてなど)を入れておいたほうが良いかも
    → 読んでもらうための工夫は必要……スポンサーを意識した記事にする?

Try(可能であればやってみたいこと)

  • スポンサーアンケートに、次回の WordCamp への協賛意向を聞いておく✅
  • 初めて協賛を検討しているスポンサー向けの案内記事があると良いかも
  • メール以外の連絡方法(Slackなど?)で確実に見てもらったりすると良いのかも(でも使えるツール問題があるのでメールに落ち着いたのもワカル)

総合的に、とてもスムーズだったんじゃないかと思います。

スポンサーブースの赤裸々な振り返り

弊社カエルコムニスのブース。柿の種で新潟アピ。

当初、マイクロスポンサーになろうかなと思っていたのですが、勢いでブロンズスポンサーとして協賛しちゃいまして。おかげで、スポンサーチームとしての盲点が見えたところもありますし、「もうちょっとこうしてほしいな」と思う点もわかったので、とても良い経験になりました。

先述のとおり、WordCamp は WordPress の公式コミュニティとして社会規範(共同生活の秩序を維持するための規範)がメインなので、市場規範(経済活動を維持するための規範)は持ち込みにくいです。つまり、強引に売り込んでも嫌われるだけ。

ですが、機能的価値よりも情緒的価値でモノを語ることができれば、WordCamp におけるスポンサー出展はとても喜んでもらえます。実際、出展しているスポンサーに集まっている人の多くは「ファン」や「見込みファン」が多いように感じました。もちろんノベルティハンターもいるのですが、そのような方はミツバチのような役目なのかなとも思っています。もらったノベルティは、どんどんSNSに出してほしいですし、そのほうが(私も含めて)スポンサー企業も喜びます。

で、WordCamp スポンサーの費用対効果は?

まず、ブロンズスポンサーのブース出展のためにかかった費用は以下のとおりです。

  • ブロンズスポンサー協賛金:75,000円
  • スタッフ用Tシャツ作成(1枚):4,191円
  • QRコード付きチョコマシュマロ(100個):8,175円(@81.8円)
  • ステッカー(96枚):2,112円(@22円)
  • クーポン券(50枚):2,500円(@50円)
  • 小冊子(B5・40P・100部):21,510円(@215円)
  • テーブルクロス:1,398円
  • プリント代(4枚):200円
  • シール代:699円
  • クロネコ配送(1箱):往路 2,130円+復路 1,530円

合計:119,445円(制作工数や移動費はプライスレス)

Tシャツやテーブルクロスは次からも使い回せますし、ステッカーと小冊子、シールは余ったので、これも使い回せます。アンケートは40件ご回答いただけたので、初参加にしてはありがたい件数です。

参加者が300人超ということだったのですが、ブースに来ていただいたのは50名程度のようなので、セッション数を300とすると、エンゲージメント率は17%といったところでしょうか(適当)。アンケートで連絡先を書いていただいた数は9件なので、コンバージョン率は3%です。一般的なウェブのCVRよりは高いものの、中身は仲間が多いのですよねえ笑

ストレングスファインダーを初めて知った方・知っているけれど受けたことはない方を合わせると15名(37.5%)なのですが、そんな方もブースに来ていただいたという事実がありがたいですね。

なんてことを考えると、ビジネス的に投資対効果を見極めるとしたら、10万円程度で認知度を向上できるなら、悪くないのではないかなと。(人数によるものの)企業研修を1回行えばペイできる金額ですし。

ただし個人的には、スポンサーブースに立つだけではもったいないと感じるので、スピーカーや当日ボランティなど、兼任できる参加の仕方をできる限り検討してみると良いのではないかと思います(楽しいことはしゃぶり尽くすスタンス)。

WordPress コミュニティの理念に共感できるなら、定期的に協賛して損はないですよ。そもそも、協賛できるかどうかという条件があるので、「WordPressの公式コミュニティに協賛できた」ことそのものが価値になります。迷っている方は、ぜひ一度応募してみてください。

カエルコムニスとして何をしたのか

目的は、2つありました。

  1. WordCamp のスポンサーを経験してみる
  2. ストレングスファインダーとの相性を見てみる

①に関しては、やってみたことで肌感覚がわかりました。ただ立っているだけでは誰も来ないのは、WordCamp に限らず他の展示会でも同様かと思います。ノベルティを目当てにブースに来られる方もいらっしゃるので、アンケートに答えなくても渡せるノベルティがあると良いですね。

②に関しては、悪くない印象です(想定どおり)。そもそも、WordPress のコミュニティにまったく関係のなさそうなブースがあっても敬遠されることは目に見えていたのですが、ストレングスファインダーを知らない人に話ができたことそのものが貴重でした。

ちなみに、ブースで私の代わりを務めてくれたのは息子です。トークスクリプトは渡しておいたのですが、「途中から面倒くさくなったから自分で話した」というくらいには、頼もしかったです。最年少スポンサーだったと思いますが、声をかけていただいた方、ありがとうございました。

何より今回は、「ストレングスファインダーをよく知らない」という方が多い環境に入れたことで、初心に返る感覚をつかむことができました。元々弊社は「ストレングスファインダーを知っている方」を対象にしているため、(ブースに立てているときには)ピッチのA/Bテストをしていたのですよね。

ストレングスファインダーを知らない方に、「個人の “強み” がわかるツールです」というと無表情のままですが、「個人の “勝ちパターン” が見える化されるツールです」というと、少し表情が変わるんですよね。よく見てるなと思いました?職業病ですコレ。

参加者はかなり戦略的思考力系が多い印象で、「勝ちパターン」という言葉が刺さりやすかったのかなと思います。個人的には、影響力系の人には「強み」(ただ、自分が正しいというスタンスなのでストレングスファインダーの必要性をそもそも感じないことが多い)、人間関係構築力系の人には「自分らしさ」、実行力系の人には「最適な仕事の取り組み方」が刺さりやすかったんだろうなと、今になって思うところです。

〈最上志向〉さんには「チームの強みを持ち寄って最高のパフォーマンスを出す」、〈回復志向〉さんには「チームメンバー間のコミュニケーションギャップを埋める」、などの言葉が刺さりやすいように、もうちょっとピッチを工夫できたかもな〜という振り返り。

ちなみに、チョコマシュマロに二次元バーコードを印刷してもらったのは弊社だけ(やったぜ)でしたが、その先は企業研修です(29件のアクセスをいただきました)。「ホントに読めるの?おっ、読めた!」という驚きがあったようです。せっかくなら次回の出展時には、簡易テストにつながるものにしてみようかと思います。

なお、私の口には入っていません……美味しかったでしょうか?賞味期限は WordCamp Tokyo 2023 より1ヶ月です。

40ページの小冊子は、個人的に気になる点があったために、次回の WordCamp Kansai で再配布できたら改版します。「おわりに」の最後に簡単なコーチング方法を記載しておいたので、ペアになってやってみてくださいね。

ファシリテーターとしての振り返り

とても良かったという感想を散見したので、私がファシリテーションで意識した3つのポイントを振り返りがてらシェアします。

①活性化させるのはパネリストではなく参加者

これを意識できるかどうかが大きいかなと思います。

実は以前、パネルディスカッションを見た際に私自身が「なんかちょっと内輪ウケしてるな……」という印象を持っていました。そんな経験があったので、壇上から会場を眺めた時、直感的に「なるほど?」と思ったんです。ステージは明るい。けれど、会場はちょっと暗い。ファシリテーターがパネリストに注意を向けるのも自然なことだなと。

元々、最初に「WordPress との関わり方」や「使用年数」を聞いておき、ネタ質問として「自信を持ってメンテナンスしているか」を設けることは決まっていたのですが、挙手割合のフィードバックをしたときに「へぇ〜」という空気感を把握したので、その場で会場を巻き込むことにしました。

振り返れば、もうちょっと会場に聞けたタイミングあったなあとか、質疑応答をもう少しハンドリングできたかなと思ったんですが、愚痴を共有してヘドバンしやすい雰囲気と、それを笑い飛ばして「じゃあどうするよ?」って話はできたので、まあまあ及第点です。

ちなみに、少し時間に余裕があったので、隣同士でちょっと話してもらおうかと一瞬思いましたが、挙手だけで巻き込めたようなので、やらなくて正解でした(やっていたら突っ込みすぎていたかもしれない)。開会式で積極的に交流しようという話もあったので、やるならそれを伝えてからですね。

ちなみに、パネルディスカッションに水はいらないかもしれない笑(めちゃくちゃ蹴ってしまった……)

②パネリストが話したそうにしていてもツッコむ

打ち合わせはしているものの、セッションを聞くとアレコレ思いがあふれるために、パネリストとして話したいことや伝えたいことはたくさんあると思います。ですが、進行は自分が握っていることを意識して、それぞれの立場から同じ重みづけで語ってもらうことを大切にしました。

「自分が聴いて欲しい」のか「会場が知りたい」のかを臨機応変に見極める必要があるので、「愚痴が続きそうだな」と思ったら主導権を握ることは意識しました。今回は、想定以上に愚痴大会になった(セッションが早く終わったので、失敗談パートを長くしてしまった)のは個人的な反省ですが、しくじりを踏み台にして進んでいただきたいと願っています。

③初心者が認識できなそうなワードを解説してもらう

今回はそれほど多くはなかった(と思う)のですが、元々海外製の WordPress は横文字がとても多いです。PHP や MySQL など、セッションで出てきたワード以外が出てきた時に、「それってどういう意味でしたっけ?」とツッコむことで、理解のブレーキをかけずに済みます。ヘッドレスCMSとか、私もよくわからんです。

WordCamp は初心者からベテランまで参加者の層が厚いため、できる限り初心者を意識した進行を心がけることで参加しやすい雰囲気が作れるのではないかと思います。ベテランは、知識を得たり共有したり直接聞いたりできるスキルがありますが、初心者はそもそも「誰に何を聴いたらいいのかわからない」という状態なので、個人的には最優先に尊重して、コミュニティの一員となってもらいたいなと思っています。

今回のパネルディスカッションは、スピーカーの遠藤さん(たぬきさん)からとてもわかりやすいセッションを元にしたために、20年経った今の WordPress に対して考えることができたのではないでしょうか。

ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。たぬきさんの記事はこちらです。

たぬきのWeb万屋
WordCamp Tokyo 2023 で「環境変化の激しいWordPressのメンテナンスをどう考えるか」というテーマのセッシ... 2023年10月21日に「WordCamp Tokyo 2023」が開催されました。そのコンテンツでセッション&パネルディスカッションで登壇しましたので、感想とかを書いておこうかと思いま...

まとめ

総じて、大成功に終わった WordCamp だったんじゃないかと思います。

もしかしたら、「満足はしたけど、いつもみたいに燃え尽き感がない……」という方もいらしたかもですが、そういうのも含めてちょうどよかった印象です。規模は縮小したものの、やってることは変わらない(実行委員も少なめだったのでひとりの負担が大きくなっていたようでした)ので、質が落ちることはなかったなって。

完全に非営利で、関わっている方は全員無償のボランティアで、自腹で参加しています。ですから、当日の質を高められるのは、何よりもスポンサーの金銭的援助が大きいのです。会場でランチも懇親会(アフターパーティー)も提供できたのも、スポンサーのおかげですし。

ですので、スポンサーとして参加したからには、その費用対効果は出しておきたいと思いました。次回のノベルティ制作などの参考にしていただけたらと思います。

なお、次回は2024年2月23日(金・祝)、24日の2日間、WordCamp Kansai 2024 が神戸三宮で開催予定です。スケジュールに入れておいてくださいね。

今回参加できた方も、見逃してしまった方も、次回またお会いしましょう(/・ω・)/

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著者

話しているとゴキゲンになれるメンタルマネジメントの人。ストレングスファインダー®を扱うGallup認定ストレングスコーチです。心理学はエリック・バーンの交流分析とカール・ロジャーズの傾聴が大好き。WordPressの勉強会やサイト制作、ウェブマーケティング支援など、ウェブ方面でも色々とやっています。登壇は楽しく役立ちわかりやすく、がモットー。

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