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経営者の資質とリーダーシップをストレングスファインダー® で考える

ごめんください。Gallup認定ストレングスコーチの小杉です。今回は、個人でもあり組織を率いる「経営者」という、ちょっと特殊な立場の個人をストレングスファインダーから見たときの考察です。

ストレングスファインダー® は個人の自己理解、ひいては他者理解につながるので、チームに導入することでパフォーマンスをアップしていくことができますが、「経営者」は自己理解と他者理解のどちらも必要なんですよね。そこを深めてまいりましょう。

なお、私コスギは米国Gallup社に認定されたストレングスコーチですが、下記の内容はストレングスファインダーをベースにした個人の見解であり、公式の回答ではありません。資質は組み合わせによって異なる発揮の仕方をするので、認定ストレングスコーチにご相談いただいたほうが、経営者個人の具体的な傾向から課題解決できるようになります。

そもそも、“経営者の資質” とは

一般的に「資質」とは、「資」も「質」も “生まれつき” という意味を持つので、「生まれつき持った生産的に活かされている才能」という文脈で語られることが多いです。似た言葉に「素質」がありますが、「素」なので「未開拓な資質」と言えるでしょう。「生まれつき」と言われたり「遺伝子レベルで決められている」などと言われると、「じゃあ自分は何なんだろう」と考えてしまうかもしれません。特に、うまくいかないときは迷ってしまい絶対解や免罪符を求めがちです。

ストレングスファインダーで診断される「資質」は、才能(日常的で無意識な生産性の高い感情・思考・行動のパターンのこと)を4つの領域で34パターンにまとめたものです。これは、先天的・後天的どちらもあると言われているので、遺伝子レベルで「資質」は決まっているかもしれないけれど、開拓していくのは自分次第と考えるほうが建設的ですよね。
※ちなみにウェルビーイングの研究では、人の幸福感は遺伝と環境が50%、あとの50%は自分の選択と努力で決まるそうです。

「経営者としての資質は開拓すれば良い」という結論になるのなら、経営者たるリーダーは、どこを目指して開拓していくべきなのでしょうか。

巷にはさまざまなリーダーシップ論があり、この記事を書くときにもPM理論やSL理論を考えてみましたが、ストレングスファインダーと一番相性が良さそうなオーセンティック・リーダーシップ論で考えてみることにしましょう。

なお、リーダーシップ論の変遷は、こちらのグロービスの記事がわかりやすいです。

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オーセンティック・リーダーシップ

Authentic とは「本物の」「正真正銘の」「正統な」という意味があります。オーセンティック・リーダーシップは「偽りのない自分らしいリーダーシップ」と言われていますから、まさに強みを生かしたリーダーシップを考えるのに最適ですね。

オーセンティック・リーダーシップを発揮するためには5つの要素があると言われています。

  1. 目的:自らの明確な目的を理解する
  2. 価値観:自身の価値観に基づいて行動する
  3. 真心:立場にこだわらず本音で向き合う
  4. 人間関係:深い信頼関係をつくる
  5. 自己統制:自律する

①目的:自らの明確な目的を理解する

どこを目指すのか、なぜ目指すのかを明確にすることは、リーダーの絶対条件です。

オーセンティック・リーダーシップにおける目的は「こうあるべき」や「こうしなければならない」と偏見や義務感から生まれるものではありません。

経営者が目的を定めるためには、自分だけの原体験を探った先にある「一晩中思いを馳せながら、語っても語っても飽きない何か」が必要です。そこには努力など存在しません。多少転んだところで気にせず前に進みたくなるような、純粋でシンプルな欲求そのものです。それは理念、情熱、原動力、価値観、パーパス、ミッション、ビジョンなどと呼ばれるものです。

「要するにこのチームは、◯◯のために◯◯を目指している」と言えるとブレません。

ストレングスファインダーのTOP5には行動原理や根源欲求が含まれていますので、すでに社風に影響しているのではないでしょうか。以下の欲求一覧表も眺めてみてください。

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②価値観:自身の価値観に基づいて行動する

価値観という点ではストレングスファインダーを活用できますが、オーセンティック・リーダーとしては、その価値観は高い倫理観に基づいていなければなりません。とはいえ経営者はさまざまなケガをして、それでも前に進んでいるので、黒歴史を背負っている方は少なくないはずです。自らの価値観を相手に押し付けてしまった、自らの価値観に反した行動をしてしまった。そんな過去の反省を自らの価値観と照らすと、未来に向かうための適切な行動が見えてきます。

そこで参考にしたいのが、人間の徳性を重視した「VIA ストレングス」。ポジティブ心理学学会ではストレングスファインダーよりもVIAの方がポピュラーで、道徳心の研究が今もなされているそうです。VIAは無料で何度も診断できるので、ストレングスファインダーの前に試してみるのも良いかもしれません。

VIAストレングスがストレングスファインダーと大きく異なるのは「診断結果とは違うけど、本当に自分が大切にしたい価値観はこっち」と選んだ価値観に基づいて行動することが歓迎されること。しばらくしてから直感的に診断してみて、上位に来たことを喜んでも良いのです。特に、思考系が強めの方が感情系の「ハピネス・ストレングス」を大切にしたいと考えて行動すると、ウェルビーイングにつながりやすいとも言われていますし。

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③真心:立場にこだわらず本音で向き合う

経営者は弱みを見せられない、弱みを見せてしまったらナメられる。そう考えている方は少なくありませんが、オーセンティック・リーダーシップの考え方では、自分の強さも弱さもすべて認めて本音で相手に向き合うことが求められます

強みと弱みは表裏一体なので、ストレングスファインダーの資質を見れば、下手な占い師よりも分析できます。自分の強みだけでなく、脆さまでさらけ出すことは、裸になるより恐ろしいことかもしれません。恐ろしすぎて向き合えず、開き直りたくなるかもしれません。そこで自己理解を止めてしまうと、本音は閉ざされてしまいます。これはもったいない。

弱みを見せたことで、お互いに察し合って遠慮する文化をつくってしまうのはやめましょう。言葉にしにくい感情を持っていても、あきらめることはありません。リーダーに求められるのは、まずは相手を対等な人間であると尊重して対話を重ねることです。そのうち本心で語り合えるようになった時、いわゆる「心理的安全性」が確保されるのです。

④人間関係:深い信頼関係をつくる

深い信頼関係があると、お互いにハッキリと「NO」を言えます。そして代替案を考えられます。これは特定の人間関係だけでなく、リードするチーム全体が心理的安全性を感じられる必要があります。

ビジネスにおける人間関係だけではありません。家族やパートナーシップ、コミュニティを含めたプライベートの生活においても、素直な自分でいられる深い関係性が必要とされます。もし、どこかの人間関係を犠牲にしているかもしれないと感じたら、②の価値観から振り返ってみましょう。その価値観を共有できていないだけかもしれませんよ。

人が失敗を恐れるのは、迷惑だと思われたくない、恥をかきたくない、失望されたくないなどの理由があるから。結局、人間関係の悪化を怖れているんですよね。心理的安全性が保たれた深い人間関係の環境なら、失敗しても励まされるので、どんどん挑戦できるようになります。誰かを攻撃する必要がないので、モノゴトを良くするための摩擦が起きます。そうすれば目的に近づきやすくなるでしょう。

⑤自己統制:自律する

リーダーも人間ですから、強みが出すぎて弱みに転じてしまうことがあります。人は、認められれば長所で動き、認められないと短所で動く生き物なので、セルフマネジメントによって一貫性を保つことが大切です。要するに、自分で自分の機嫌を取れるようにしておくということですね。自尊心が傷ついていると、本人としては同じ価値観で動いていても、行動は真逆になってしまうこともあるのです。

怒りや悲しみが “本心” だったとしても、そのような感情で相手を動かそうとするのは、親に言うことを聞いてほしくて駄々をこねているだけの赤ちゃんです。もう良いオトナなのですから、その怒りや悲しみを自ら理解し、認め、その裏にある思いを俯瞰して情熱に転じることが求められます。これはリーダーだけに課せられるものではありません。チーム全体が自律して目的に向かうためには、リーダーが率先して自律し、メンバーの自律を促すことも必要です。

リーダーが自律するためには、これまでの①〜④を振り返りながら、自らに向き合う時間が必要です。それはマインドフルネスだったり、コーチングだったり、カウンセリングだったりします。ご自身に合ったセルフマネジメント方法を見つけてください。

経営者の資質をストレングスファインダーで考える

それでは、オーセンティック・リーダーシップに求められる5つの要素をストレングスファインダーから考えてみましょう。

ストレングスファインダーの34個の資質は、4つの領域に分かれます。上位資質(1〜10位)に何色の資質が多いか、確認してみましょう。なお、この領域はキッチリ分かれているものではなく、「○○の性質があるけれども、○○だからこっちの領域」と分けられた資質もあるので、あくまで傾向としてお考えください。

ストレングスファインダーの資質の傾向
34資質すべてが判明していると、この傾向がわかりやすいです。

上記の図は私(コスギ)のストレングスファインダー結果ですが、紫色(実行力系資質)が上位10位になく、下位に偏っていることがわかります。つまり、“「戦略的思考力」×「人間関係構築力」×「影響力」の3つを組み合わせた経営者の資質がある”と考えられます。

そんな私の資質からオーセンティック・リーダーシップの項目それぞれについて、簡単に分析してみました。少し長くなったので、興味のある方はご覧ください。

コスギのオーセンティック・リーダーシップ分析(クリックで開きます)

目的:自らの明確な目的を理解する

ひとり社長なので、自分の会社をどのようにするのかは間違いなく自由です。これは個人事業主も似たようなものかもしれません。社会のことを考えるのは苦手でしたが、今では「1人ではできないことを行うために、チームを応援していきたい」と考えるようになりました。これは3位の〈最上志向〉が、「人が可能性を発揮しないのはもったいないし、チームの相乗効果はマジヤバイ」(後半は1位の〈着想〉の声)と実感しているためです。自分の率直な欲求なので、目的にフィットします。

価値観:自身の価値観に基づいて行動する

私は2位の〈戦略性〉と3位の〈最上志向〉によって、「目的は成長によって進化する」という価値観があります。これによって、昔から目的を設定することが苦手でした。ですが、より大きくて抽象度が高く、かつ自分の欲求に率直な目的を据えたことで、ブレなくなりました。社会人が「マジヤバイ」と使うのは、正直どうかと思うんです。ギャルでもないですし。ただ、私の1位の〈着想〉を「オトナなんだから」と潰すのはもったいない。外向けの言葉はちゃんと持っておき、内面では素直になる。それでいいんだと思います。

真心:立場にこだわらず本音で向き合う

すでに上記で本音を漏らしている気もしますが、4位の〈ポジティブ〉と6位の〈運命思考〉によって、大抵のことは受け止められます。「死ぬこと以外はかすり傷」という概念が(私にとって)あまりにも普通すぎるので、一般的には倫理観のおかしい話をされても「人間だからそういうこともあるよね」と受け止めます(巻き込まれるのは別)。また、ストレングスファインダーを知ったことで、人は千差万別だけど根本的には同じということもわかりました。

人間関係:深い信頼関係をつくる

本当の感情を共有することができれば、たいていの人間関係はうまくいくのではないかと考えています。これは特に6位の〈学習欲〉が満たされるのですが、交流分析(TA)のコミュニケーション理論とストレングスファインダーを当てはめると辻褄が合うことが多いので、よく活用しています。真心を持って接する以外に、なんらかのフレームワークを使ってみたがるのは2位の〈戦略性〉もあるからかもしれません。

自己統制:自律する

自分を律するというのは、実はかなり苦手でした。自分の好きなことだけをやっている分には良いのですが、チームで何かをするとなると、5位の〈活発性〉で個人行動が増えてしまうためです。ただ、このような自分を理解した結果、プロジェクトチームとして行動する際は自分の行動可能範囲を確認し、自由に動くことにしています。これによって、チームをフォローすることもできています。自分の才能を活かすための条件を自分で整えることで、モチベーションを保ちながら動けるようになりました。

余談:ストレングスファインダーは、採用に使える?

ストレングスファインダーは、採用には使うべきではない(採用後のチームで各々の強みを活かすべき)というのが公式の見解です。例えば私(コスギ)の場合、上記だけを見ると自分の下位資質を補ってくれる「実行力系の高い人」を採用したくなりますが、資質だけで判断するような相手を信頼できるでしょうか。しかも“真逆の資質” を持つ相手は価値観が異なるので、お互いを許せないと感じることも少なくありません。どんな資質の相手でも信頼関係が先にあれば、お互いの強みを活かして課題を解決できます。だから、ストレングスファインダーを採用に使うべきではないのです。

戦略的思考力の領域が高い経営者

戦略的思考力は、考えることが得意な資質の領域です。思考優位なので論理的に考えることができ、学習も欠かしません。文字通り戦略を立てて考えながら進むことが得意なので、様々な理論や文献から知見を得るタイプです。

オーセンティック・リーダーシップを取るのであれば、①目的の設定が得意です。もし④人間関係や⑤自己統制でグラついても、考えることをあきらめないでください。考えることで突破できます。あとは、行動あるのみ。

戦略的思考力系は、それぞれが自律して考えながら進むことを好みます。チームが共感できる戦略の全体像とロードマップを共有し、丁寧に説明し、定期的にアウトプットしてお互いに振り返りの機会をつくると、本領を発揮できます。目的達成のためにチャレンジすることも多く、失敗も成功も経験できるチームになりやすいです。

人間関係構築力の領域が高い経営者

人間関係構築力は文字どおり、他者との関係構築が得意な資質の領域です。チームに貢献することがモチベーションになるので、従来のトップダウン型よりもフラットなネットワーク型の経営者として、お互いの利益になる信頼関係を築くための支援に長けています。

オーセンティック・リーダーシップを取るのであれば、④信頼関係の構築が大の得意です。様々な方の話を尊重する分、①目的や②価値観が曖昧になりやすいので、リーダーとして明確にし、共通認識を固めて進めましょう。

人間関係構築力系は、非言語のコミュニケーションも含めて安心できる場を好むので、チームそれぞれの特性を共有して対話を続けながら、メンバー一人ひとりがそれぞれの方法で行動しやすい環境をつくると、“らしい” リーダーになります。天然の人たらし力で好かれやすいので、メンバーの自信を引き出してくれることでしょう。

影響力の領域が高い経営者

影響力は、人を動かすことが得意な資質の領域です。この資質の傾向が強い方は、声や姿勢が明らかに異なり、いかにも人を率いてくれそうなオーラがあります。すでに従来のトップダウン型でリーダーシップを発揮していることが多いでしょう。相手を尊重はするものの、基本的には自分が正しいというスタンスを崩しません。

オーセンティック・リーダーシップを取るなら、①目的と②価値観の共有はしやすいですが、③真心で話しても、相手が萎縮して④信頼関係につながりにくいことがあります。「言いたいことがあればハッキリ言ってほしい」という気持ちは⑤自己統制を意識して一旦抑え、相手の態度を尊重しましょう。

影響力系は敵も味方も多くなりやすいので、意識して目的を明確に設定することで遂行力を磨けます。目的を納得して遂行できる実行部隊が存在し、チームとしてスムーズに情報を享受できる指示系統を整備できると、本領を発揮できます。チームの力を束ねて大きなことを成し遂げやすいのも、この領域の特徴です。

実行力の領域が高い経営者

実行力は、終わらせることが得意な資質の領域です。目標まで着実に実行し、誠実でストイックな雰囲気があります。自ら手を動かすことが好きなので、現場の第一線で活躍しているかもしれません。同時に、本当はチームに任せたほうがいいのにと葛藤しているかもしれません。

自分の感情よりもやるべきことを優先する傾向が強いので、ビジネスライクなつきあい方になりがちです。オーセンティック・リーダーシップを取るのであれば、③真心や④人間関係のために、ご自身の気持ちを言語化することを意識してみましょう。そうすると、①目的にも共感されやすくなります。

実行力系は、思考の余地なく行動を重視できる環境を好むので、お互いを尊重したルールやガイドラインに則って行動できるようにリードできると、この領域の強みを活かせます。イノベーションを起こすことより、100を100のまま保ち続けることに長けた信頼感にあふれるチームになっていることでしょう。

ご自身の資質の傾向をふまえ、理想とするリーダーの解像度を高めて、5つの要素を考えてみてくださいね。

なお、私(コスギ)の才能をフルに活かし、ストレングスファインダーを活用した3時間の企業研修を提供しています。資質からプロファイリングもおこなっているので、満足度も高いです。経営者や役員を含めて行うことが多いのですが、スタッフの皆さんは経営者のことをよく見ていますよ。

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経営者の資質とストレングスファインダー

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著者

話しているとゴキゲンになれるメンタルマネジメントの人。ストレングスファインダー®を扱うGallup認定ストレングスコーチです。心理学はエリック・バーンの交流分析とカール・ロジャーズの傾聴が大好き。WordPressの勉強会やサイト制作、ウェブマーケティング支援など、ウェブ方面でも色々とやっています。登壇は楽しく役立ちわかりやすく、がモットー。

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