ごめんください、コスギです。
基本的にはメンタルマネジメントの仕事を主軸にしていますが、「WordPress(ワードプレス)」という、世界で40%以上使われているシステムが大好きで、ホームページ制作・開発の仕事も(実は)請け負っています。
さて、そんな WordPress には公式のコミュニティがありまして、この6月20日〜26日の1週間、日本最大級のイベント「WordCamp Japan 2021(ワードキャンプジャパン)」の裏方スタッフ(実行委員)として、準備の段階から参加していました。
結論としてはすごく楽しかったし、また機会があれば実行委員として関わりたいし、引き続き WordPress を使っていきたいなと思った次第です。その振り返りと、なぜ私がまだ WordPress を使っているかについて残しておくための記事です。
WordPress 公式コミュニティの一大イベント WordCamp(のちょっと裏側)
コロナ禍の前はオフラインでも各地で行われていた WordCamp(ワードキャンプ)。私は2013年に初めて参加した次の年から毎年実行委員を経験しており、2019年には新潟県(長岡市)で実行委員長になったくらいには、WordPress のコミュニティが大好きです。コスギスという屋号で個人事業主を営んでいた時代には、「わぷー」(WordPress の日本公式キャラクター)の帽子をかぶっていたので、やたらと視認性の高い黄色い帽子を見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。それが私です。
今年は完全オンラインなので日本中はもとより、世界中の方とつながることができました。海外在住の日本人の方や、日本語が堪能なアメリカ人もいれば、ネイティブな英語オンリーのセネガル人などとも(なんとか)コミュニケーションできて、なかなかに新しい経験でした。そんなふうにオンラインの良さも味わいつつも、「この感触はやっぱり、WordCampだな」と思った次第です。
WordCamp は完全ボランティアで、やりたい人がやりたいことをやっていける場なのですが、決めるべきこと・決められていること・決まったこと・決めきれないこと・決まったけど変わることなどが最終日までどんどんカオスになっていきます。そして当日は状況によって、臨機応変に対応を迫られることが多いです。特に今回は7日間あり、セッションと夜の懇親会は1日目と7日目にあったので、1日目の状況を7日目に改善するスピードがすごかったですね。
WordCamp の実行委員を何度か経験していて思うのは、「当日に参加者を迎えて気づくことが想像以上にある」ということ。つまり、準備に没頭すればするほど(自分にとっては)当たり前のことが増えてしまって、盲点が出てきてしまうのです。何度経験していても、毎回イレギュラーが起きるのは何故でしょうね(むしろそれを楽しんでいるフシもあるかもしれない)。
今回はそれでも、一番参加者に近い当日ボランティアを含めたリハーサルでの声がとてもありがたく、開催1週間前に仕様を変えたところもありました。準備期間中、考えに考えたうえで「しょうがないかな」と思っていたことでも、実際の生の声を聴くと「いやいや、まだ何かしら可能性があるんじゃないかな?」と思えてくる不思議。情報も手段も目の前にあるオンライン開催だったからこそ、可能性を探って対応しやすかったんですよね。
準備期間で大切なのは、「何をしなければならないのか(How・What)」以上に「どんな思いを大切にしたいか(Why)」を共通認識にすることが重要で、それがあったから成功したんだろうなと、改めて感じられた WordCamp でもありました。参加者の視座から得られる情報をもっと早いうちに取り入れられたら良かったかもと思いつつも、今回はこの「Why」を軸に置いていたからこそ、具体的に判断しやすかったとも思っています。
期間中、前日の反省を活かして調整することに葛藤がなかったわけではないですが、少なくとも Twitter の反応を見る限りでは、とても快く感じていただけたのではないかと。公開されているブログ記事も、すべて観測済みです。それぞれの記事に綴られている気持ちが実行委員として大切にしたい思いだったことに、じんわりとうれしくなりました。
リアルなつながりを感じられるバーチャルスペース「oVice」
私は今回コミュニケーション班として、交流スペースの「oVice(オヴィス)」というサービスを担当し、日中や交流会・懇親会などの企画をサポートしていました。oVice 上での体験がどれだけ素晴らしかったのかは、下記のツイート(一部)を見ていただければわかると思います。
当初、oVice での企画をはじめた際、私は割と新しい方でも物怖じしないタイプなので、能動的に楽しめる遊園地のような仕掛けを想定していました。ですが、一緒に計画していた仲間の「積極的に話はしにくいけど、参加している感があるといい。そういうのも交流だと思うから」という思いを大切にした結果、受動的に巻き込まれて楽しめる企画やスペースができ、そこで安心できた方々が能動的に声掛けする一歩を踏み出せた方が増えたように思います。
実際に参加者の方からも「何かしなくてはならないと思わなくてもいいのが良かった」と仰ってもらえたことが、今も響いています。私の琴線に触れたこの言葉はおそらく、今後のイベント運営の糧にもなることでしょう。深夜までアレコレ考えていた甲斐がありました。感謝という言葉ではまとめられないくらいに、素敵な経験を得られました。本当にありがとう(エアリプ)。
私は、オープンソースの本質は共依存であり、お互いに何かをしてあげることで満たされるから発展しているのだと思っています。だから、一方的な流れはあまり受け入れられない。けれど、あえてそこに流れを作る必要もなく、停滞していてもいい空気を許容するのもアリだなあと思えるようになりました。ああ、これが「自由」だな、と。
とはいえやっぱり会話の仕掛けが欲しかったトークゲーム会
WordCamp は、(行動規範のもとに)やりたい人がやりたいことをカタチにできる場なので、「oViceもいいけど、積極的に会話で知り合える関係性をつくりたーい!」という思いを形にしたのが、トークゲーム会。
テーマに沿った自己紹介をしあって、グループの共通点を見つけるゲームです。見つけた共通点をチーム名にし、そのチーム名に至った経緯を紐解くことで、話に花が咲きやすくなります。初参加でとても緊張した方もいらっしゃいましたが、楽しんでいただけたようでした。何度も自己紹介をするなんてことは普段ほとんどないと思うので、懇親会で気軽に挨拶する布石になったらいいな、と目論んでいたのはここだけの話です。
WordCamp は “ WordPress の大規模な勉強会” でもある
そもそも、WordCamp は何かといえば、私は「WordPress 好きが集まる文化祭」という認識(Camp=テントで宿泊するという意味ではなく、「人が集まる」という意味のため)なのですが、とても有益なセッション(セミナー)をたくさん聴講できるので、「WordPress の大規模な勉強会」とも言えるものです。
今回の WordCamp では、1日目と7日目の2日間、2トラックずつでセッションを開催していました。それらはすべて YouTube で公開されているので、タイムテーブルを参考に視聴してみてください。
WordPress の終活をテーマにちょっこし登壇しました
さて、たくさんのセッションが公開されていますが、これらのテーマは応募した登壇者の名前をすべて伏せ、タイトルと概要の情報だけを元に決めたそうです。そんなことはつゆ知らず、「優先順位は最下位で良いので〜」と備考欄に入れてセッションに応募してみたらLT大会(ライトニングトーク・5〜10分の短いセッション)枠で、登壇することになりました。
まさか WordCamp Japan 2021 の最後に WordPress を辞めるための心構えを喋ることになるとは思っていませんでしたが、ありがたい話です。あまり登壇経験のない方を優先的にということだったので、私でいいのかな?と思ったんですが、単純に目立っていただけで WordCamp の登壇は意外と少なかったのかも説。
年々、「WordPress は言うほど簡単じゃないし、なんだかんだで手間がかかるし、今なら WordPress 以外の選択肢もたくさんあるから、別に WordPress でなくてもええやん」と思うことが増えています。始めるのが簡単なだけに、なんとなく作られたままの WordPress は少なくありません。WordPress がスパムの温床と言われるのは、セキュリティの対策もされずに放置された WordPress が大量にあるからではないかと思う派。
だからこそ「WordPress はじめました!勉強中です!!」という方が眩しく見えて、せっかく作った WordPress は最後まで面倒見てほしいという願いもあり、私のできることをしようと思いながら活動していました。そして、WordPress を残すことは、不要な WordPress を終わらせることでもある、と思い至ったのです。
過去に、自分のサイトは何度か葬ってきましたが、ひとつだけゾンビになっているサイトがあります。そのあたりまで話ができたら良かったのですが、短い時間でお伝えするのは共感とインパクトだけに留め、WordPress の終活に必要なエンディングノートに書いておくポイントとして、5つにまとめました。
ということで、5分では話せなかったことを少し補足します。否、少しどころではないので、チェックリストにしてください。
1. レンタルサーバーと独自ドメインの情報
「どこの土地を借りて家を建てているのか」という情報です。毎月/毎年記帳されている「レンタルサーバー代」「ホスティング代」「独自ドメイン費用」なども確認し、どのタイミングでいくらかかっているのかを確認しましょう。なお、それぞれが1つとは限りません。これらの情報は引っ越しの際にも非常に重要な情報になるので、しっかりまとめておきましょう。
- レンタルサーバーの契約情報、管理画面のログイン情報、オプション加入情報
- 独自ドメインの契約情報、管理画面のログイン情報、ドメインの有効期限
- サブドメインで稼働しているウェブサイトの情報
- 独自ドメイン、メールアドレスの利用情報
そして、一度運用した独自ドメインは、半永久的に持ち続けるべきと強くお伝えします。
特に、10年近く運用していた独自ドメインは中古ドメインとしての価値が高まるので、「もうこのドメインは使わないな」と思って手放した途端に、勝手に過去のコンテンツを掘り起こされ、適当なアフィリエイトサイトの姿をしたゾンビサイトにされてしまいます。
愛する我が子を思い出とともに葬ったのに、数カ月後には自分の名前で適当な情報を追加され、不適切な広告が貼り付けられている姿には、思わず法的な手段を取りたくなるほどの嫌な汗が出ます。アクセス数が少なければ意味を失って成仏するとは思うので詮索無用ですが、どうか、過去の私のようにはならないでいただきたい。勉強用のサイトを作っている方は、特に。
2. テーマやプラグインの情報
現在のウェブサイトで、どんな目的を達成するためにどんな機能が稼働しているのかを把握しておくものです。
- 購入した有料テーマ・プラグインの契約情報(買い切り・サブスク)
- テーマ・プラグインのバージョンや最終更新状況
- オリジナルテーマやプラグインのメンテナンス契約情報
これらは、WordPress やレンタルサーバーの環境を新しくする際にも必要な情報です。特に、3年以上アップデートされていない環境で稼働していたら、現在の最新環境に対応できない恐れもあります。頻繁に更新されているテーマやプラグインの選択が推奨されるのは、このような背景もあります。
ウェブの環境は日々進化しているので、テーマやプラグインの乗り換えが必要になることは珍しくありません。だからこそ、オリジナルなテーマやプラグインは、メンテナンスがどこまでなされるのかを確認しておく必要があります。最新の環境に対応できるような体制がなければ、ある一定の時期にリニューアルが必要になることも想定しなければなりません。
目的達成に直結しない機能はメンテナンスコスト(手間や様々なリスク)が無駄にかかってしまうので、断舎離することをオススメします。
3. アクセス解析、広告等の Google 系の情報
「Google アナリティクス」と「Google サーチコンソール」はウェブサイトの成長度合いを知るために必要なので、大抵の場合は導入されていると思われます。
- Google アナリティクスの情報と管理者
- Google サーチコンソールのオーナー権限と情報と管理者
- Google タグマネージャーの情報と管理者
- Google 広告、SNS広告の情報と管理者
- その他の解析ツール(ヒートマップなど)の導入経緯と管理者
ただし、それ以外のツールが好奇心で導入されていることも少なくありません。
誰が管理しているか、オーナーは誰なのかがわからない場合は制作業者に確認してください。自社管理するようにしておきましょう。もしその他の解析ツールが導入されていても誰も確認していないなら、導入経緯を確認してから削除しておくことをオススメします。余計な読み込みを減らして、快適な閲覧につながります。
4. 関係者のログイン情報
ログイン情報をまとめておくことで、関係者を洗い出すことができます。
- WordPress の管理者メールアドレス(「設定」で確認できるメイン管理者)
- WordPress の管理者ユーザーと役割
- WordPress の編集者以下のユーザーと役割
- 各種連携ツールの管理者と連絡手段
もしメンテナンス契約を結んでいたとしても、これらの情報は資産を管理するための鍵と言えるものなので、自社管理しておく必要があります。外部の業者が持っていたら、確認して自社で保管しておきましょう。とはいえログインIDと本人が結びつく情報だけあれば良く、パスワードを平文で保管することはやめてください。パスワードがわからなくなったら、再設定すれば良いのです。
5. 全資産管理者の明確化
これまでの情報を管理しておく担当者を決めておくものです。必ず、自社で立てておきましょう。情報の責任を取るのは会社として責任を持つものとして属人化させず、定期的に見直せるように管理しておくことが必要です。
- 1〜4 の情報まとめ
- 契約業者との納品とメンテナンスの契約内容の確認
- NDAなど管理の引き継ぎ時に必要な情報
WordPress でホームページを作れるようになった駆け出しの方は、この手の情報を悪意なく自分の手元に置きがちです。お客様の資産は、お客様に管理していただいてください。そのためのエンディングノートです。
これでもまだ荒削りだと思うので、皆さんがメモしている情報をぜひシェアしていただけたらウレシイです。随時更新して、エンディングノートを充実させませんか。
次のオンライン開催に向けての布石になった WordCamp
過去の WordCamp よりも規模が大きく完全オンライン開催ということもあり、すべてが順調に進んだということはありません。全員、本業の隙間に時間をつくってのボランティア参加なうえ、初参加で実行委員という方も少なくないなかで、コミュニケーションの相違も起こりました。
しかも私は当初、一歩引いたところから参加していました。本業がバタバタしていたこともありましたが、たくさんの方が関わるだろうから、なるべく前に出ないようにしよう、頼まれたら動こう、いざとなったら巻こうというポジションに決めていたためです。なまじ経験があるだけに、意図的に声を潜めていたのもありました。
ボランティア活動をするといつも、遠慮と配慮の違いを考えさせられます。相手にちゃんと近づかなければ「遠慮」になってしまうので、お互いに「配慮」できればチームワークは円滑になります。俯瞰的な立場にいたからこそ、そのような場を作れたら良かったのかもしれないと反省しつつも、主導権を握る事になってしまうのが怖かった。私は最後の最後まで、遠慮していたのかもしれません。
とはいえ本番の6月を迎えた頃には、仲間が様々な準備をしてくれていたおかげで、すべてがスムーズに動けるようになっていました。ハンドルを握る覚悟をしてからは本業に手をつけていられませんでしたが、大きな問題もなく、ハプニングが起きても冷静に対応できました。すべて、仲間のおかげです。
WordCamp は良くも悪くも「戦友」ができるような文化ですが、それでもまた関わっていきたい。それは、今回のような仲間への恩を、仲間からいただいた感謝を、次に送りたいと思うからです。自分は何ができただろうかという反省はしても自信は持てないので、今回の反省は何らかの機会に活かしたいと思うからです。毎回最高の WordCamp なのですが、個人的にはいつも、次が楽しみになってしまいます(そして終わって凹んでは次に向かう繰り返しのパターン)。これはもうストレングスファインダーでもVIAでもゴールテープが切れない性分だとわかっているので悲観してはいません。
総合的にはすごく楽しかったし、終わりよければすべて良しと考えていますが、それだけではなかったことも記しておきます。なにより、こうやって清濁併せ呑んでいる WordPress のコミュニティが大好きです。素晴らしい WordCamp でした。
実行委員長を始めとしたリードの方々、各班長さん、実行委員のみなさん、スポンサーや登壇者の方々、そして参加者の皆さん、本当にありがとうございました。また次の WordCamp でお会いしましょう。