はい、ごめんください。Gallup 認定ストレングスコーチの小杉です。
個々人が持つ才能を見つけ、最大限に活用するためのツール「クリフトンストレングス®(ストレングスファインダー®)」の34資質について、今回は〈回復志向〉(かいふくしこう/Restorative®)をモリモリ解説していきます。
〈回復志向〉さんは問題解決が得意で、壊れたものや機能しなくなったものを修復することに情熱を感じます。多くの場合、困難な状況や複雑な問題に直面しても冷静さを保つことができ、物事を元通りにするための効率的な解決策を見つけます。
- (解決された状態が明確なため)誰もしないなら私がやります。
- (問題が小さくすれば解決できるから)まあ、なんとかしますよ。
- (状況が見えないとき)行動して問題が起きたらそのときに対処すればいい。
こんな態度を取ることが多いです。Gallup公式サイトはこちら(英語)👇
ストレングスファインダーの〈回復志向〉とは?
〈回復志向〉は、何かがうまくいかない物事の根本原因を冷静に特定し、効果的な解決策を見出します。物事、システム、人間関係など、様々な対象の修復や回復に喜びを感じます。問題意識が高く、当事者として解決に当たろうとするため、元通りになるまであきらめない粘り強さも備えています。
この資質が上位(10位以内)にある方は、まさに「回復」の才能を持っています。元通り(ゴール)の状態が明確なほど、当然と言わんばかりに行動で示します。決まった仕様を実装する仕事が多いためか、エンジニアにも多くみられる才能です。
メタファーとして、医療を取り上げることも多いです。まさに〈回復志向〉の才能は、医者が病気やケガという問題の解像度を高め、治療を支援するようなものです。
次々に解決していきたい欲求が強いため、必然的に問題への関心も高いです。その姿勢がネガティブに捉えられることもありますが、〈回復志向〉さんにとっての問題は解決の種という感覚です。そのため、問題が小さいうちに発見し、大きな問題もチャンクダウンし、冷静に解決していく天才です。世の中には問題だらけなので、食いっぱぐれない才能とも言えますね。
〈回復志向〉は「物事を終わらせたい、ゴールを達成したい」といった完了欲求の強い実行力の資質のため、自分にフィットする解決スキルを磨き、プロとして活躍されている方も多いのではないでしょうか。
〈回復志向〉さんの口癖「でもまだ、……」
〈回復志向〉さんは、ストレングスファインダーの結果を見て納得する方が多いです。口癖らしい口癖はそれほどありませんが、問題が起きる前の状態が気になったり、問題の解像度を上げたい言動が散見されます。
- 「でも、まだここができてない(から対処すれば正常になる)」
- 「困ってるのは放っておけない」
- 「今の(問題が小さな)うちに片付けようよ」
- 「それはもう、終わったことじゃない?」
- 「それ、間違ってますよね?」
言語化できるかどうかは他の資質も関わってくるため、〈回復志向〉を上位に持っている身近な方の言動を思い出してみるとわかりやすいかもしれません。
〈回復志向〉の感情的な特徴
〈回復志向〉さんの場合、「マイナスになったからプラスに戻す」「ゼロになったからイチに戻す」など、「あるべき状態に戻したい」という欲求で条件反射のように行動することが多いです。人間関係構築力などの感情優位になりやすい資質とは異なり、〈回復志向〉の資質そのものは “優しさ” よりも、シンプルにそのままの状態が落ち着かないといった行動原理のため、実際は社会貢献力の塊といえます。
自分で解決できると思ったことは当然のように行動するため、困っている人がいると放っておけません。たとえば、信号を渡ろうとしている、重たい荷物を持っている、疲れた顔で電車に乗っている、などの困りごとに気づいて手を差し伸べます。悩んでいる相手に対しても「元気になってほしい」と、話の聞き役になります。
お店で利用したトイレットペーパーが切れたとき「急いでいなければ補充したい」と答える方が多いのも、〈回復志向〉さんあるある。問題へのアンテナが強いだけに、「誰かが困るかもしれない」ということに対して、人知れず対処しておくことがよくあります。
ただ、問題が見えていても「あるべき状態」が見えていないと、解決したい、けれど問題がハッキリしなくて解決できない、でも解決したいから問題をアレコレ見つけてみる、でも解決できない……と、堂々巡りになってしまうことも。
解決できないことを否定する必要はありません。ゴールの解像度を上げることでパフォーマンスが上がるのは実行力系資質全般に言えることなので、「あるべき状態=仕様」を明確にすることが大切です。そうすれば、持ち前の才能によって解決してしまうのですから。
〈回復志向〉は人に向けないほうがいい?
ストレングスファインダーの資質はすべて、ヒト・モノ・コトすべてに発揮できますが、特に〈回復志向〉は実行力の領域に類するため、モノやコトの問題に対して圧倒的な解決力を発揮しつつ、ヒトに対しても発揮されます。
たとえば、普段元気な相手が困っていると「気持ちを回復したい」という欲求が出て「どうしたんだろう?なにかできることはないかな」と気になります。人間関係構築力資質も上位に併せ持っているなら、ヒトに才能を発揮しやすい傾向も強くなります。
このようにゴールを明確に把握していると、スキルがなくてもプロのカウンセラーに匹敵するほどの癒し力を発揮します。相手を尊重し、聴き入っているだけで「聞いてもらったらラクになった、ありがとう」と言ってくれることでしょう。
ですが、人は完璧ではないため「人としてのあるべき絶対的な姿」は誰にもわかりません。しかも日常的に(本人が気づき、解決を望む・望まないに関わらず)潜在的な問題を抱えていることがほとんどです。
〈回復志向〉さんはそんな相手の問題に惹かれるように反応し(“本人らしいあるべき姿” に近づいてほしいという一心で)「ここは直したほうがいい」「この問題は私が力になれる」と、指摘することがあります。しかし、問題を認識していない相手にとっては “余計なお世話!” と怒りを覚えてしまうことのほうが多いでしょう。このすれ違いはもう、悲劇です。
本人が問題を認識して解決したい、目指す目標が決まっているから到達したいと明確に望んでいるなら、信頼関係のうえで〈回復志向〉を存分に発揮しましょう。しかし、相手との信頼関係が不十分だと感じられたら、この才能を相手に向けるのはもったいありません。
もちろん、ご自身に〈回復志向〉を向けることも同様です。自己信頼や明確な目標がない状態で「ここは直すべき」「このままじゃダメだ」と自分に対して指摘するのは、「とにかく痩せたいから、食事を抜きすぎて逆効果」みたいな状況です。とはいえこれも〈回復志向〉さんの “あるある” なんですけども。
〈回復志向〉さんは天才的な解決力がありますから、解決できる問題なんて、とっくに解決しているはずなんです。そのときにどうしていたのかを振り返ってみると、問題に対する解像度が高かったのではないでしょうか。そこに気づいたら、同じように目の前の問題に向き合ってみれば大丈夫。
これほどの社会貢献力のある才能を生産的に使わないのは、もったいなさすぎてオバケが出ますよ👻
〈回復志向〉の才能を具体的に活かす
ストレングスファインダーの結果としての〈回復志向〉は、「問題を発見して解決する才能」です。それを強みとして発揮できているかどうかは、別。
〈最上志向〉さん同様に、〈回復志向〉さんはどうにも自己評価が低い傾向にあります。しかし、才能は自分にとって当たり前過ぎて、気づきにくいことも少なくありません。フィードバックをもらったり、ご自身でも振り返ってみながら、〈回復志向〉の長所を集めてみましょう。
「強み」とは、常に完璧に近い成果を出す能力のこと。〈回復志向〉の長所を磨くことで、問題の根本原因を捉え、解決できる体制を整え、継続的で生産的な改善に取り組めるようになります。あなたらしい問題解決のベストプラクティスができあがっていることでしょう。
〈回復志向〉の長所を磨いて強みにする
〈回復志向〉さんは、必要に応じて問題の背景を知り、解決された状態に向かうための必要事項を想定し、奔走します。この一連の解決プロセスそのものに充実感を得るのが特徴的です。
たとえば、以下のような長所(一部)があります。
- チーム内の問題に気づいて特定し、解決する。
- プロジェクトの障害や遅延を冷静に分析し、適切に対策する。
- システムやプロセスに存在する欠陥を見つけ出し、修正するための洞察力がある。
- 困難な問題が起きたストレス状況下でも冷静さを保てる。
- 異なる視点からも問題解決に関わることのできる柔軟性がある。
- プロジェクトの目標達成に向けた効率的なプロセスを提案できる。
- チームメンバーの個々の問題に対する理解と支援力がある。
- チームの生産性を最大化するための、既存プロセスの改善。
- 中長期を見越した問題を発見し、根本的な解決をあきらめない。
- 対人関係の摩擦や困難なコミュニケーションを修復する。
- 時代の変化によって起きる問題への適応力と対応力がある。
- 技術的な問題や挑戦に対する深い理解と情熱がある。
- 困難な状況でも前向きな姿勢を維持する強い精神力がある。
- 具体的なフィードバックにより、チームの目標達成をサポートする。
- 新たな問題や困難をチャンスにし、自身やチームのスキルを向上させる。
プログラマーが任意の仕様を実装することを役割とするように、「現在の状態」と「未来の状態」とのギャップを埋めることを得意としているため、さまざまなことに応用できる有用な才能です。
〈回復志向〉の短所も、上記の長所が出過ぎたとき、たとえば「チーム内の問題に気づく能力」を “良かれと思って” 無意識に使ってしまうと、「ダメ出しばかりされても……」と捉えられかねません。
本来は問題発見以上に、解決するプロセスに喜びを感じる才能ですから、「解決した状態」が相互に求める未来であるかどうかを確認することを意識してみましょう。
ちなみに、〈回復志向〉の資質がネガティブにしか認識できない方は、みずみさんの記事を読んでみてください。①から順に読んでいくと、資質の理解にもつながります。⑫あたりはもうヒューマンドラマのクライマックスなんですよ。
〈回復志向〉さんの強みを引き出す声かけ
- この問題点は何だと思いますか?◎◎さんの視点から教えてください。(問題発見力を借りる)
- その問題が解決した先は、どんな状態を想定していますか?(ゴールの共有)
- この問題を解決する最善の方法は何だと思いますか?(プロセスの共有)
- 3ヶ月で◎◎さんが解決できることは、どんなことがありますか?(具体的な期日の設定)
- ◎◎さんが見つけてくれたこの問題は、これまでを見直せる良い機会です!(才能の承認)
〈回復志向〉さんは、問題以上に解決を意識することで才能を思う存分発揮できます。そのためのスキルアップに興味があれば、「ソリューション・フォーカスト・アプローチ(Solution Focused Approach)」を学んでみるのも良いかもしれません。
組織の成果に直結する問題解決法 ソリューション・フォーカス #PR
少し古くてちょっとクセのある本ですが、解決志向(ソリューション・フォーカス)の基本は得られます。〈回復志向〉さんにとっては「そりゃそうでしょ」と共感しやすい内容だと思うので、あとは実践してみてください。また、解決志向は現在では「ブリーフセラピー」となっているので、気になる方は未来・解決志向ブリーフセラピーへの招待もどうぞ。
こうやって考えてみると、やっぱり〈回復志向〉さんは冷静な癒し手なんですよね。まさに「回復」役です。
〈回復志向〉と他の資質との組み合わせ
ストレングスファインダーには他にも多くの資質があります。例えば、〈責任感〉は、一度引き受けた仕事は心理的所有感を持ち、必ずやり遂げる才能です。〈共感性〉は、他者の気持ちや何を必要としているのかを理解することが得意です。このような他の資質と〈回復志向〉の持つ問題解決力が組み合わさると、どのようになるでしょう?
〈回復志向〉とその他の資質が組み合わさったときの一例を挙げてみました。ただし、組み合わせの発揮の仕方は他の資質や経験にも大きく左右されます。違いを知るための参考にどうぞ。
- 回復志向 × 達成欲:時間を惜しまず、次々と解決行動に勤しむ。
- 回復志向 × 活発性:素早く問題を見つけ、大きくならないうちに解決する。
- 回復志向 × 適応性:突発的に起きた困難な問題でも、冷静に対処する。
- 回復志向 × 分析思考:複雑な問題に対しても根本的な解決プロセスを見出し対処する。
- 回復志向 × アレンジ:問題解決のためにさまざまなリソースを組み合わせたり、得意な人に分担する。
- 回復志向 × 信念:倫理的な問題に対し、確固たる決意をもって解決に取り組む。
- 回復志向 × 指令性:問題を率直に指摘し、その解決に向けた具体的なアクションを指示する。
- 回復志向 × コミュニケーション:問題の本質を他者に説明し、解決の道筋を提案する。
- 回復志向 × 競争性:他者よりも早く問題を見つけ解決することで、優位性をつくる。
- 回復志向 × 運命思考:問題を解決することが自分の使命であると感じ、全力を尽くす。
- 回復志向 × 公平性:公益性の観点から問題を指摘し、改善する。
- 回復志向 × 原点思考:問題の根本原因を見つけることに焦点を当てる。
- 回復志向 × 慎重さ:問題を解決するための行動を起こす前に、すべてのリスクを考慮する。
- 回復志向 × 成長促進:問題を解決することで自分自身や他者が成長する機会を見出す。
- 回復志向 × 規律性:問題を解決するために、組織された方法やルーチンを使用する。
- 回復志向 × 共感性:他者の悩みや困り事を深く理解し、感情的な面から問題解決に取り組む。
- 回復志向 × 目標志向:問題を解決するために具体的な目標を設定し、集中して取り組む。
- 回復志向 × 未来志向:問題が将来どのように影響を与えるかを理解し、それを解決する。
- 回復志向 × 調和性:問題解決において全員が一致した意見であることを重視する。
- 回復志向 × 着想:創造的な解決策を見つけて問題解決に取り組む。
- 回復志向 × 包含 :問題解決の過程で全員が参加していることを確認する。
- 回復志向 × 個別化:個々の人々や状況に最適な問題解決策を見つける。
- 回復志向 × 収集心:問題解決に必要な情報やリソースを集め、活用する。
- 回復志向 × 内省:問題解決後のあるべき姿をさまざまな視点から熟考し、最適解を導く。
- 回復志向 × 学習欲:問題解決の過程で新たな知識やスキルを学ぶことを好む。
- 回復志向 × 最上志向:問題解決に取り組む際に、その問題が二度と起きないような最良の解決策を模索する。
- 回復志向 × ポジティブ:問題解決の過程に情熱を持ち、必ず解決できると周囲を鼓舞する。
- 回復志向 × 親密性:相手の問題を共有し、深く関わりながら解決のプロセスを歩む。
- 回復志向 × 責任感:問題を解決するまで、決してあきらめずに最後までまっとうする。
- 回復志向 × 自己確信:リスクを把握したうえで、自分が問題を解決できるという強い自信を持つ。
- 回復志向 × 自我:他者にとっては困難な問題に、解決できるのは自分だけと覚悟して取り組む。
- 回復志向 × 戦略性:いくつもの問題解決プロセスを想定し、最適な戦略を見つけて対処する。
- 回復志向 × 社交性:困っている他者に声をかけ、解決して去っていく。
〈回復志向〉は実行力領域に属する資質なので、基本的には完了を想定した解決行動が前提にありますが、資質が組み合わさると動き方が少し変わります。特に一緒に出やすい資質や、刺激し合う資質を振り返ってみましょう。診断後に確認できる「クリフトンストレングス上位資質(TOP5)レポート」を確認して、同じように〈回復志向〉を上位に持つ方と読み比べてみるのもオススメです。
まとめ
打ち上げられたヒトデを拾って海に戻す少年と、それを見た男の物語があります。浜辺にいる何千ものヒトデを一つひとつ拾って海に返している少年に対し、男は「そんなことをしても、すべてのヒトデを救えるわけではないから、意味のないことだ」と言いますが、少年は「でも今投げたヒトデには意味があることだ」と答えます。〈回復志向〉さんと話すと、この物語を思い出します。
〈回復志向〉をはじめとした実行力系の資質は、完了に向かって淡々と行動することが多いです。〈回復志向〉さんも、解決できたあるべき状態に到達したときに達成感を得ることはありますが、どちらかというと、解決している真っ只中のほうが、実は充実感を得ているのではないでしょうか。
すべての人が健康で、病気もなく怪我もしない世界には医者が不要なように、すべてがあるべき状態の世界は〈回復志向〉さんにとって物足りなさもあるでしょう。幸か不幸か、世の中に問題がなくなることはありません。その問題にいち早く気づき解決することに喜びを感じる〈回復志向〉さんは、やはり貢献力の才能だと思うのです。
問題そのものに対して物怖じしないどころか、前進の機会にしてしまうところにも胆力を感じます。以前、状況が見えなくて迷っている〈回復志向〉さんが、「実際に行動してみてうまくいけば良し、もし問題が起きたら対処すればいいんですもんね。そのほうが動きやすくなります」と仰っていたことが印象的でした。
いまいちこの才能を活かせてない、持て余していると感じられたら、ストレングスファインダーを元にしたコーチングを受けてみてください。私は〈最上志向〉なので、〈回復志向〉さんの良さを上記のように語れますが、同じ〈回復志向〉のストレングスコーチを探すのもオススメです。他の上位資質が望むご自身の姿を実現できる素晴らしい才能ですから、望む “あるべき姿” を一緒に言語化していきましょう。
\ 資質の特徴から紐解くのでわかりやすい /