はい、ごめんください。Gallup 認定ストレングスコーチの小杉です。
個人の才能(無意識の行動パターン)を見つけるだけでなく、仕事や人生を充実させるために活用するためのツール「クリフトンストレングス®(ストレングスファインダー®)」の34資質について解説するシリーズ。今回は〈コミュニケーション〉(Communication®)です。
資質名からちょっと誤解されやすいのですが、〈コミュニケーション〉は、あらゆる言葉を駆使してわかりやすく伝達する才能です。“言葉の魔術師” と呼ばれるほどの言語的影響力によって、聴衆の心を動かします。
- (たとえ話なども含めるため)話が理解しやすく興味をそそられる
- (話すことが得意なため)セミナーや会議で堂々とプレゼンする
- (言葉の定義にこだわるため)微妙なニュアンスの違いを説明してくれる
こんな特徴を持っているのが〈コミュニケーション〉さん。Gallup公式サイトはこちら(英語)👇
ストレングスファインダーの〈コミュニケーション〉とは?
〈コミュニケーション〉さんは、言葉の繊細なニュアンスの違いすらも聴衆に理解してもらえるよう、さまざまな言葉を駆使して自らの思いを心に届けます。思考や感情が口からあふれるかのように滔々と話し、聴衆を魅了します。時には優れたプレゼンターとして、わかりやすく鮮やかなストーリーを紡ぎます。
自分の使う言葉にこだわりがあり、相手に理解され、その心や行動を動かすことが大好きです。影響力の資質の中でも、言語的な影響力を持つ才能と言えます。認知特性として聴覚優位の方も多いようで、「本を読むよりオーディブルを聴くほうが理解しやすい」「暇さえあれば音楽を聴いている」という方もいます。
また、“脳が口にある” と揶揄されるほど、話しながら考える傾向があります。画面を読み上げながら呟いたり、話を聴いてもらったら自己解決するなんてことも〈コミュニケーション〉さんの特徴です。「声」との関係が深い才能ですね。
このように、自分が「見る」「聞く」「読む」のどれに長けているのか(認知特性)を知っておくと、ストレングスファインダーの資質と合わせて自分の強みを活かしやすくなります。以下の記事を参考にどうぞ。
〈コミュニケーション〉さんの口癖「たとえば」
〈コミュニケーション〉さんは相手に理解してもらうためなら、さまざまな工夫をこらして説明します。特に使うのがとてもわかりやすい「たとえ話(メタファー)」。そして、言葉のニュアンスをとても大切にします。
- 「北風と太陽でたとえると、今は北風のような状態なんですよね」
- 「そうですね、たとえば、子どもの頃を思い出してください」
- 「それに関しては、興味深い話があるんです」
- 「実際には、ある条件が必要です。それは2つありまして、……」
- 「あなたの考えを聞かせてください」
伝えるときは常に「理解してもらいたい」と考えているので、たとえ話はいくつかのパターンを持っています。自分の趣味に関連するものや、一般にも理解できる日常的なもの、その業界での「あるある」などですね。
また、〈コミュニケーション〉さんはモノゴトを順序立てて話したり、感情のこもったエピソードを話すことも得意です。「この人の話は、いつも聴きやすいな」と思う相手がいたら、〈コミュニケーション〉の才能を持っているかもしれませんよ。
〈コミュニケーション〉の感情的な特徴
〈コミュニケーション〉さんは比較的、嘘をつくのが苦手な方が多いです。なぜなら、思ったことが口からもれることが多いから。「あぁ〜」「確かに!」「そうね」「そうそう」「うん」「はい」などの感嘆詞や相槌を無意識に口にしていることも。
もちろん上位資質によってこの傾向は変わりますが、基本的に会話を大切にします。「話し合えば、わかりあえる」スタンスなので、自分の意見を理解してもらいたいですし、相手にも話してもらいたいのです。
また、自分の話が届いているかどうかを常に観察しています。伝えっぱなしということはあまりなく、相手からの(言語的・非言語的な)フィードバックを元に、意見の伝え方を再構築します。これによって対話を成立させ、お互いの意見交換を活発にします。
〈コミュニケーション〉自体の欲求は「理解してもらいたい」で、その方法が「話すこと」になります。ですから、他の上位資質の欲求や感じていることを言葉にすることに長けています。
たとえば〈共感性〉なら「(感情の機微を理解してもらいたいために)身が引き裂かれるかと思うほど、しんどいんです」、〈回復志向〉なら「(問題は解決すべきであると理解してもらいたいために)問題は小さなうちに対処すれば、後々工数も費用もかけなくて済みますよね」なんて感じに伝えます。
〈コミュニケーション〉が低く下位にあると、コミュ障?
コミュニケーションという言葉から「他者との関係を築いて、イイカンジに仲良くなる才能」といった印象を持つかもしれません。他者との関係を築くのは人間関係構築力の資質です。改めて意味を確認しておきましょう。
コミュニケーション(英: communication)とは、「伝達」「通信」「意思疎通」などの意味の表現。「交流を図る」「意思を伝え合う」といった行動を指す意味合いで用いられることも多い。言葉を使った意思疎通だけでなく、文字を使った伝達、身振り手振りによる意思表示などもコミュニケーションに該当する。
コミュニケーションの意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書
どちらかというと「相手が理解しやすいように伝えるのが得意な才能」ですね。この「相手に伝わる」才能は34資質の中でも群を抜いていますので、会話を通して他者と交流することはできます。ですから、〈コミュニケーション〉が高い人は、比較的「他者との関係を築く」ことに長けていることが多いです。
しかし「イイカンジに仲良くなる」かどうかは、この資質の使い方によります。
ストレングスファインダーの資質はすべて、「成熟した使い方(コントロールできており、自分はもちろん他者や社会のために使える)」と「未成熟な使い方(コントロールできず、自分のためにしか使えない)」があります。
〈コミュニケーション〉が未成熟のまま発揮されると、「理解してほしい、わかってほしい」という思いが強くなりすぎて、自分の話したいことだけ話して相手の話が聞けず、会話を支配してしまうことがあります。逆に〈コミュニケーション〉の資質が低い方は、口をつぐんでしまうことでしょう。シンプルに、もったいないですよね。
というわけで「他者との関係を築いて、イイカンジに仲良くなる」のは、才能の使い方によります。
〈コミュニケーション〉が低いときは〈慎重さ〉が高いことも多く、「気軽さ」よりも「誠実さ」を大切にする価値観があるのではないでしょうか。すでに信頼関係ができている相手には、気兼ねなく話しているでしょうし。
やはり、上位資質。TOP5がすべてを解決します。
〈コミュニケーション〉の才能を具体的に活かす
ストレングスファインダーで診断した時点でわかるのは、無意識におこなっているポジティブな習慣(才能)。「長所」ともいえます。〈コミュニケーション〉さんは、「話がわかりやすい才能」ですね。この長所が自分にあることを自覚して意識的に磨くと「言語的影響力を発揮して、自分の伝えたいことが相手に届く」という強みになります。たとえば「セミナーに登壇すると、毎回満足度の高い評価を得られる」といった具合です。
〈コミュニケーション〉さんは自分の意見を伝える際、原稿を読み上げることは滅多にしません。プレゼンテーションでスライドを見せても画面を説明することはなく、キーワードを元にメッセージを伝えます。こんな才能を持った人がプレゼンの作り方を学んだら、すべて吸収して最高のプレゼンになるでしょう。実際、講師として活躍している方も多いのではないでしょうか。自分の才能は独学で身につけたようなものなので、改めて磨いてみることをオススメします。
ネブラスカ大学における実験では、平均的な読解力を持つ学生のグループと、読むことが得意な学生のグループに速読の訓練をしたところ、平均的な学生は1分間に読める単語数が1.5倍に伸びたのに対し、得意な学生は8倍もの成果が認められたデータもあります。Gallup社のホワイトペーパー「INVESTING IN STRENGTHS」(PDF) に記載があるので、興味のある方はどうぞ。
才能は磨いてなんぼですね。
〈コミュニケーション〉の長所を磨いて強みにする
では、具体的に〈コミュニケーション〉さんにはどのような長所があるのか挙げてみると、やはり圧倒的な言語伝達力を活かした項目が目立ちます。もちろん、これらは一部でしかなく、あらゆる場面で活かせます。
- プレゼンテーションで聴衆を引き込みながら、情報やアイディアをわかりやすく伝える。
- チーム内の意見を代弁しながら誤解や疑問を解消し、ミーティングを促進する。
- 交渉において双方のニーズや要望を明確にし、合意点を見つける。
- 顧客のニーズや懸念を理解し、セールスピッチによって適切な提案を行う。
- イベントやセミナーの司会として会話をスムーズに進め、参加者間の交流を促進する。
- 対立している双方の意見を明確にし、共通の解決策を探る。
- 教育やトレーニングにおける学習者の理解度に合わせて情報を伝え、質問に応じる。
- 目的や方針を明確にしたキックオフミーティングにより、全員のモチベーションを向上させる。
- 社交の場において新しい人々との関係を築き、有意義な情報交換を行う。
- アドバイスや評価を適切にフィードバックし、受け手の理解を深める。
- 新製品やサービスの特長や利点を明確に伝え、興味を引きつける。
- 報告の際、複雑な情報や問題点をわかりやすく伝え、冷静な判断を促す。
- チームメンバーへ励ましの言葉や成功体験をフィードバックし、モチベーションを高める。
- クレーム対応時には顧客の問題や懸念を理解し、効果的な解決策を提案する。
- 社内で変更や更新があった際、新しいポリシーや手順をわかりやすく伝えて浸透させる。
当の〈コミュニケーション〉さんの中には、「そんなに毎回、うまく話せるわけではない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。「言葉巧みに話せる長所」を持っていると同時に、前項(〈コミュニケーション〉が低く下位にあると、コミュ障?)で挙げたように、「言葉によって場を支配してしまう短所」を同時に持っています。
そもそも、人は話を聴いてもらうことで、自分の感情や思考を整理しやすい生き物です。〈コミュニケーション〉さんはこれが特に顕著なので、コーチングなどでとことん聴いてもらったり、登壇機会をつくって自分の意見を話す場をつくってみてください。感情を整理でき、自分の話したいことをつかめるようになります。そして、才能がイキイキしますよ。
自分の考えを言葉にする時間を、大切にしてくださいね。
〈コミュニケーション〉さんの強みを引き出す声かけ
何よりも、その言語化力を借りるところから。言い回しなども参考になります。
- この件、◎◎さんならどこに気をつけて伝えますか?(伝達のコツを借りる)
- そのアイディアを、チーム全体に共有してもらえる?(情報伝達を依頼)
- 新しい方に、チームの文化や習慣を伝える役をお願いしてもいいですか?(伝達力を借りる)
- この件、◎◎さんなら、何にたとえますか?(言語化力を借りる)
- ここまで話してみて、なにか気づいたことはありますか?(思考の促進)
〈コミュニケーション〉さんは聴衆が必要なので、質問されることは大好きです。ですから、「この人は話し慣れていてわかりやすいしオモシロイな」と思った方には、ぜひ質問してみてください。時間に制約がなければ、喜んで答えてくれる方が多いです。
また、聴く側になったら、〈コミュニケーション〉さんの話は口を挟まず、最後までじっくり聴いてください。そして最後に「話してみてどう?」と尋ねてみましょう。実は、話したことをあまり覚えていられないのですが、それでも振り返りながら、思考がまとまったような表情をすると思います。同じことを2・3回話すことがあっても、それは本人にとって重要なテーマなので、「何度か◯◯の話をしていましたが、これは◎◎さんにとって、どのようなものなんですか?」と聴いてみるのもオススメです。
ちなみに、話が長くなってしまうことは〈コミュニケーション〉さん自身も自覚しています。業務に支障が出るようなら、「時間内で話すために、どんな工夫をしていますか?」と聞いてみましょう。影響力系の資質は本人のやり方を尊重するのが一番ですが、難しいようなら一緒に考えましょう。うまくコントロールできない場合はコーチングなどを受けて、資質を使いこなせるようになるのがオススメです。パワフルな才能ですから。
〈コミュニケーション〉と他の資質との組み合わせ
では、〈コミュニケーション〉と他の資質との組み合わせを見てみましょう。〈社交性〉は、初めて会う人にも友達のようにすぐに打ち解ける才能です。〈慎重さ〉は、先のリスクを想定して対処する才能です。このような他の資質と組み合わさると、「伝わりやすいアウトプットになる」という傾向が生まれます。
たとえば、〈達成欲〉〈活発性〉〈目標志向〉などはパワフルさが発話に乗るので、(早口になりやすいものの)聴衆を飽きさせません。また〈指令性〉や〈信念〉は指示や価値観がズドンと真っ直ぐに伝わり、言葉に重厚さが増します。“言葉の魔術師” という二つ名は伊達じゃありません。
以下は組み合わせた場合の一例ですが、参考にしてみてください。
- コミュニケーション × 達成欲:持ち前のスタミナで、伝えるべきことをすべて伝える。
- コミュニケーション × 活発性:情報や意見の共有が素早く、周囲の人々にも行動を喚起する。
- コミュニケーション × 適応性:状況や相手に応じて、臨機応変(アドリブ)にわかりやすく伝える。
- コミュニケーション × 分析思考:分析した情報やデータを、わかりやすく解説できる。
- コミュニケーション × アレンジ:複雑な状況や情報を整理し、明確かつ効果的に伝える。
- コミュニケーション × 信念:自らの信念や価値観を、力強く誠実に伝える。
- コミュニケーション × 指令性:指示や命令を、端的かつ明快に伝えて相手を動かす。
- コミュニケーション × 競争性:競争を煽るような言葉を用い、モチベーションを最大化する。
- コミュニケーション × 運命思考:起きていることの意味を語り、学びや洞察を共有する。
- コミュニケーション × 公平性:すべての声を等しく取り入れ、公平に意見や情報を共有する。
- コミュニケーション × 原点思考:過去の経験や教訓を根拠に、情報や考えを伝える。
- コミュニケーション × 慎重さ:情報を伝える前に正確性や適切性を検討し、慎重に言葉を選ぶ。
- コミュニケーション × 成長促進:他者の成長や進歩を奨励する言葉やフィードバックを送る。
- コミュニケーション × 規律性:システマティックな方法で情報を整理し、順序立てて伝える。
- コミュニケーション × 共感性:他者の気持ちや考えを理解し、それを言葉で豊かに表現する。
- コミュニケーション × 目標志向:チームや個人の目標達成を強調し、明確に伝える。
- コミュニケーション × 未来志向:未来のビジョンや夢を魅力的に伝え、他者をインスパイアする。
- コミュニケーション × 調和性:人間関係の摩擦を和らげ、対話の促進によって共通の理解を築く。
- コミュニケーション × 着想:独自のアイディアや考えを創造的な方法で伝える。
- コミュニケーション × 包含 :すべての人々が話題に参加し、情報が共有される環境を強化する。
- コミュニケーション × 個別化:個々の特性やニーズに合わせ、カスタマイズして伝える。
- コミュニケーション × 収集心:収集したさまざまな情報や知識を、他者との会話によって共有する。
- コミュニケーション × 内省:自らの考えや感じたことを、他者とじっくり対話する。
- コミュニケーション × 学習欲:獲得した新しい情報や知識を、他者にわかりやすく教える。
- コミュニケーション × 最上志向:最高の成果を目指す情熱的な言葉で、周囲を刺激する。
- コミュニケーション × ポジティブ:前向きなメッセージを用いて、他者を鼓舞する。
- コミュニケーション × 親密性:偽りのない真心で対話し、密接な関係や絆を深める。
- コミュニケーション × 責任感:約束や期待に応えるためのコミットメントを明確に伝える。
- コミュニケーション × 回復志向:失敗や逆境からの回復のストーリーを伝えることで、他者を励ます。
- コミュニケーション × 自己確信:確固たる信念や自信を持って、メッセージを伝える。
- コミュニケーション × 自我:自己の使命の重要さを、ストーリーによって強調する。
- コミュニケーション × 戦略性:目的に向かって最も効果的なメッセージを用いる。
- コミュニケーション × 社交性:多くの人々との関係を築きながら、活発に情報や意見を交換する。
ストレングスファインダーを診断すると得られるレポートのうち、「ストレングス・インサイトガイド(強みの洞察ガイド)」にはTOP5の特徴的な解説があります。ご自身の〈コミュニケーション〉が、特にどの資質と絡んでいるのかもわかりやすいので、まだ目を通していなければご確認ください。
まとめ
言葉によって人の感情・思考・行動に影響を与える〈コミュニケーション〉さんは、そのままでも「話が聞きやすいし、わかりやすい」のですが、才能は磨いてなんぼ。ビジネスにおいて、他者に伝えるシーンは多岐にわたります。目的や目標に合わせて、ご自身の言語力を磨いてください。
そして、ご自身の思考や感情を整理するためには、「誰かに聞いてもらう」ことを必要とします。
私(コスギ)の〈コミュニケーション〉は8位でも、コーチングを受けるときは「話しながら考えたいので、気になったところは質問を挟んで欲しい」とお願いして、時間の9割くらいは話し続けています。また、X(旧Twitter)でもスペース(音声ライブ)を開き、ストレングスファインダーについて考えていることを、30分間ずっと喋っていることもあります。そして、「やっぱりこういうことだな」と自分の気持ちを整理しています。
そして家族全員、TOP10に〈コミュニケーション〉を持っているので、とにかく会話が尽きません。家族で顔を合わせると、何かしら話をしています。歯磨きをしていても話しかけてくるほどです。私も家にいるときは聴くことが多いですが、運転中は聴いてもらうことが多いです。
私のおこなっているストレングスファインダーを使ったコーチングでも、〈コミュニケーション〉が上位にある方には聴く割合を意識的に増やしています。「話しすぎてしまって……」という方こそ、ぜひコーチングをご検討ください。
\ 資質の特徴から紐解くのでわかりやすい /