はい、ごめんください。Gallup 認定ストレングスコーチの小杉です。
すべての人が持つ “才能” を診断できる「クリフトンストレングス®(ストレングスファインダー®)」について、ひとつずつ徹底的に解説していきます。今回は〈適応性〉(てきおうせい/Adaptability®)です。
英語には「順応性」という意味もある〈適応性〉さんは、
- (予期せぬ変化を恐れないため)計画が急に変わっても動じない
- (状況の変化を迅速に理解できるため)臨機応変に行動を調整する
- (不確実性に対してパニックにならないため)冷静さを保ちながら最適な解決策を見つける
こんな様子を見せてくれます。Gallup公式サイトはこちら(英語)👇
ストレングスファインダーの〈適応性〉とは?
〈適応性〉さんは、未来でも過去でもなく「今ここ」に集中して行動します。その集中力と “渡されたものは扱える” 才能により、緊急事態や差し迫った状況にこそ冷静に対処。変化を見越した流れに基づいて優先順位を定めていますが、いつでも即興で踊るように「今ここ」に対応する軽やかさがあります。
計画性や予測可能性を重んじる人々とは対照的に、〈適応性〉さんは変化を恐れず、むしろそれを受け入れ、その中で最善を尽くすことに喜びを感じます。計画に縛られず、現在の状況に即応することで、新しいアイデアや解決策を生み出すことができるのです。
それはまさに、相手に合わせて社交ダンスを踊るような軽やかさ。コーチングでは、「Dancing in the moment」といって、コーチとクライアントは社交ダンスを踊るような関係を目指すことを伝えられています。コーチは五感を開き、クライアントと息を合わせるように寄り添い、ノビノビと踊れるように支援する役目だと。
「他者を助けたい」という欲求を持つ人間関係構築力である〈適応性〉は、無私の状態で相手や状況に合わせる天才性を持っています。瞬時に冷静になって「今ここ」に集中できるのは、自らの思惑を手放して相手の反応を敏感に察知できるためでしょう。
〈適応性〉さんの口癖「どうしますか?」
〈適応性〉さんは、現在の状況や周囲の人々に対するアンテナを持っており、常に流動的な環境に適応する能力を持っています。そのため、変化のない状況はあまり好きではない(資質が活かせずムズムズしやすい)ため、常に変化を欲していますが、自分から変化を起こすときには相手の了承を大切にします。基本的には、相手の決断や変化に乗る行動が多いです。
- 「このあと、どうします?」
- 「今からですか?いいですよ!」
- 「今いい流れなので、このままいきましょう」
- 「とりあえず、やってみましょう」
- 「いつもと違うことをやってみませんか?」
〈適応性〉さんにとっては、変化こそが現状を打破するチャレンジです。まず変化する。そして、良い状況は促進し、望ましくない状況は別の方法を選ぶ。そうやって、計画や予測に縛られることなく、現在の状況に最も適した行動を選択することに長けていますし、そのような信念を持っています。
平均的な成人は、1日に約35,000回の意識的な選択を行っているそうです。単純計算だと2秒に1回くらいになるのですが、そのほとんどは潜在意識の中で行われています。〈適応性〉さんは、選択すべきときに行動を選んでいるのかもしれないくらいには、行動力の才能です。ピンチは、絶体絶命になる前に変化できるチャンスですもんね。
〈適応性〉の感情的な特徴
〈適応性〉さんは、基本的に現実的で、冷静です。特に、予期せぬ出来事が起きた際には相手や周囲の感情を察知して、共感しながらも行動が優位になります。この時の〈適応性〉さんは「コトが起きたならしょうがない、やるか」と、どこか達観しています。併せ持つ上位資質によっては、腕まくりして事態の収束に対応することもあります。
こういった冷静さが、周囲のパニックを落ち着かせてくれることも少なくありません。「Dancing in the moment」の驚異的な天才性が発揮され、自分自身は動揺することなく、相手に寄り添いながら落ち着かせつつ、瞬時に優先順位を見極めて行動を促すのです。
川の水面に浮いて流れに身を任せている葉っぱのように、周囲が混乱している状況のときほど流れるように行動し、感情的な揺れ動きがほとんどなくなるのが〈適応性〉さんの特徴です。「柔軟性」というよりも「流動性」と言ったほうが適切かもしれませんね。
ですから、感情的な葛藤が起こりやすいのは、決められた計画に沿って行動しなければならないときや、自ら大きな決断をしなければならないときです。
「今ここ」に集中し、オーバークロック(クロックアップ)してCPUの処理速度を高めるような才能ですから、決まりきった状況に対してはオーバースペックとも言えます。普段は他の上位資質で対応するにしても、自分の才能をフルに活かせず手応えが薄い環境なら、なんだかつまらないと感じるのも不思議ではありません。
また、瞬間瞬間の選択に特化しており、「未来は今の延長線上にしかない」という価値観が強ければ強いほど、未来を想定した決断には葛藤します。未来が想定できる状況やチームが望む決定に対してGoサインを出すことを好みますが、自らの責任において決断し波を生み出すことを避けようとします。
比較的環境の影響を受けやすいといえる才能ですが、こういったことを認識しておけば「変化を見つけてその波に乗る」ことができる行動力を発揮できるのも、〈適応性〉の特徴です。流されてばかりではないのです。
〈適応性〉さんは、“いきあたりばったり”?
〈適応性〉さんは、過去や未来のことより現在の状況に対応することを(吸い込まれるように)優先するため、対処療法的な行動が多く、計画性が低い印象を与えることがあります。また、場の決定や周囲の流れに任せる態度が責任逃れするように見られることもあります。さらに、その瞬間に適応して最も効果的な行動を取るため、昨日の言動と今日の言動が変わることも珍しくありません。
こういった態度から、「いきあたりばったりで信頼できない人」と誤解されることがあります。確かに、〈適応性〉の資質が認識されずに未熟なまま「今ここ」に集中して変化を求める欲求が暴走してしまうと、環境に流されて自分の意志が削られてしまい、このようなことが起きやすいです。
ですが、上位資質は本人の生存戦略でもありますから、〈適応性〉があったからこそ乗り越えてきたことはたくさんあるはずなのです。状況の変化に迅速に対応する能力を発揮できていたときのことを振り返ってみると、しっかりと流れを読んでチャンスの女神の前髪をつかんでいたのではないでしょうか。
「波に流される才能」ではなく「波に乗る才能」ですから、他の上位資質と合わさって “いきあたりバッチリ” になった結果、今があるのですよね。当然、計画を立てられないわけでも、責任を果たせないわけでもありません。
人間関係構築力としての才能を活かし、周囲とコミュニケーションしながら、“ノリノリでバッチリ” を目指しましょう。
〈適応性〉の才能を具体的に活かす
ストレングスファインダーを診断後に得られる結果からわかるのは、「強み」というよりも「強みとして磨きやすい可能性の塊」です。これは「無意識の習慣」、もっと言えば「クセ」みたいなものです。〈適応性〉は「今ここに集中して冷静に対応できる才能」ですから、集中するタイミングをハンドリングして磨いていきたいですね。
〈適応性〉の長所を磨いて強みにする
〈適応性〉の才能は、緊急事態にわかりやすく強みを発揮しやすいですが、日常的に使えているシーンも少なくありません。こういった具体例から、〈適応性〉のアンテナが何をキャッチしているのかを認識してみると、資質を主体的に使いやすくなります。
- 緊急時でも、落ち着いた態度で周囲に安心をもたらす。
- チーム内で意見が分かれた際、中立的な立場から調整役を果たす。
- 顧客の急な要求変更に対しても、迅速に対応する。
- 交渉や会話中に相手の意見に柔軟に対応し、有益な解決策を見出す。
- 新規プロジェクトにおいて重要なポイントを示し、柔軟な計画を立てる。
- タスクが複数あっても、優先順位を柔軟に変更し、効率的に作業を進める。
- 社内の意見をまとめ、意思決定を迅速に行う。
- チームメンバーの様々なワークスタイルに合わせて協力する。
- 社内のさまざまな部署やチームと円滑にコミュニケーションを取る。
- 顧客の声を聴き、継続的な顧客サービスの改善に取り組む。
- 個々の従業員のニーズに応じたフィードバックを提供する。
- 新しいアイデアや提案に対し、オープンマインドで傾聴する。
- 日常の作業において効率的な方法を模索し、実践する。
- 困難な状況においても、冷静で前向きな姿勢でチームをサポートする。
- 新しい市場動向を迅速に捉え、それに基づいたビジネス機会を見出す。
やはり人間関係構築力だけあって、他者との関係の中で物事をスムーズにすることに長けていることが多いです。詰まりを見つけて対処したり、おおらかな姿勢で物事を受け止め促したりする姿勢は、大きな川で舟のオールを握り、流れを変えたり流れに乗ったりしているような印象を受けます。
「川に乗るタイミング」「舟のオールを動かすタイミング」などを振り返ってみると、〈適応性〉の勝ちパターンを見つけやすくなりますね。
〈適応性〉さんの強みを引き出す声かけ
〈適応性〉さんは “泳ぎやすい” 環境があるとイキイキします。周囲としては優先順位の高いニーズを伝え、自由にサポートしてもらいやすい環境を整えると、お互いの強みを活かしやすくなります。
- 今日の状況に応じて、自由に業務の優先順位を決めてください(柔軟性を維持した責任範囲)
- 途中で変更が必要になったら、遠慮なく提案してください(柔軟性を重視する環境)
- 何か変更があれば、早めにお知らせしますね(迅速なフィードバック)
- 今日は状況に応じてサポートしてもらえると助かります(自由なサポートの依頼)
- 寄り添っていただき、ありがとうございます(素直な感謝)
人間関係構築力の資質は「他者を助けること」が大好きなので、感謝を忘れずに伝えましょう。具体的なフィードバックも効果的です。資質が充実して成熟し、長所使いが増え、強みとして発揮しやすくなります。
〈適応性〉と他の資質との組み合わせ
ストレングスファインダーの他の資質、例えば〈共感性〉は、非言語の気持ちを尊重し配慮して行動する才能です。〈目標志向〉は、狙ったゴールに向かって一直線に邁進する才能です。このような他の資質と〈適応性〉が組み合わさると、「ニーズを察知して反応する」といった傾向がうまれます。
以下に相乗効果の例を挙げてみました。人間関係構築力が活かしやすい、チームワークや他者との協力が必要な環境を想定した一例です。
- 適応性 × 達成欲:急な変更を受け入れ優先順位を変更し、大量のタスクをこなす
- 適応性 × 活発性:積極的に変化を歓迎し、迅速に行動を調整してチームの活力を高める
- 適応性 × 分析思考:変化する状況でも冷静に分析しながら素早く対応する
- 適応性 × アレンジ:状況に応じてリソースや計画を柔軟に調整し、最適な成果を目指す
- 適応性 × 信念:周囲やチームの価値観を尊重しながら、人としての筋を通す
- 適応性 × 指令性:変化する状況に合わせて適切にリーダーシップを発揮する
- 適応性 × コミュニケーション:チームの意見を流動的に受け入れながら意思疎通を促進する
- 適応性 × 競争性:情勢を見極めながら常に競争優位を保ち、チームを勝利に導く
- 適応性 × 運命思考:どんな状況でも他者をおおらかに受容し、必要な縁を紡ぐ
- 適応性 × 公平性:公平性を見失わず状況に応じて柔軟に対応し、チーム全体の均衡を保つ
- 適応性 × 原点思考:過去から得られる本質的な事象を、現在の状況に適応する糧にする
- 適応性 × 慎重さ:変化する状況を見据え、迅速にリスクを対処して最小限に抑える
- 適応性 × 成長促進:変化する環境や相手のニーズに応じて、その成長を促進する
- 適応性 × 規律性:個人の裁量権を含めて構造化し、チームやプロジェクトの効率化を促進する
- 適応性 × 共感性:相手の感情に寄り添い、その本心が望む行動を本人のペースで促す
- 適応性 × 目標志向:明確な目標を見失うことなく、柔軟に計画を調整して実行する
- 適応性 × 未来志向:現在の行動を調整しながら、少し先の未来に向けて進んでいく
- 適応性 × 調和性:異なる意見から合意点を見つけ、チームの一体感を高めて前進させる
- 適応性 × 着想:緊急時でも臨機応変に創造性を発揮し、一般的ではない方法で対処する
- 適応性 × 包含 :チーム内の多様な意見や背景を流動的に包み込み、一体感をもたらす
- 適応性 × 個別化:個々の特性に応じたアプローチを取って、相手のニーズに寄り添う
- 適応性 × 収集心:変化する状況に応じた情報収集をおこない、チームの判断を促進する
- 適応性 × 内省:臨機応変に対応しながらも、その行動を振り返り、次の対応を調整する
- 適応性 × 学習欲:時勢に合わせた新しい知識やスキルを学びながら、チームの知識基盤を広げる
- 適応性 × 最上志向:現在の状況を見極め、的確に応じて最善を尽くす
- 適応性 × ポジティブ:どんな状況でも変化そのものを前向きに捉え、チームを鼓舞する
- 適応性 × 親密性:特に信頼の厚い仲間のニーズに対して、最大限の行動力で応える
- 適応性 × 責任感:状況の変化を鑑みつつ、相手と誠実にコミュニケーションしながら期待に応える
- 適応性 × 回復志向:チームが直面した問題に対し、迅速に対処して解決する
- 適応性 × 自己確信:状況の変化や場の意見に応じて自らの決断を調整し、行動する
- 適応性 × 自我:貢献できるポイントを迅速に見極め、臨機応援に場をサポートする
- 適応性 × 戦略性:チームの案をまとめながら目標を設定し、現状に即した方法を提案する
- 適応性 × 社交性:目の前の相手と素早く関係構築し、ニーズを傾聴して信頼を得る
〈適応性〉さんは「反応する」「対処する」「調整する」など、相手や状況に「応じて」行動する才能です。その行動がどんなふうに変わるのか、上位資質の組み合わせで傾向が変わってきます。
どんなふうに上位資質が組み合わさっているのかは、「インサイトガイド(強みの洞察ガイド)」を読むとわかりやすいです。TOP5に〈適応性〉を持っている方は、参考にしてください。
まとめ
川や海、雲や風のイメージが示すように、「今ここ」の環境に応じて流れるような行動をする〈適応性〉さん。その資質をハンドリングするなら、舟のオールを握るようなイメージが合いますね。
その特性上、長期計画や目標設定を苦手に感じることも少なくないかもしれませんが、一般的に言われる「計画」や「目標」を灯台のように見える化しておくことで、臨機応変に「今ここ」に対応しながら柔軟に向かうことができるようになります。
変化の激しい現代のビジネス環境において、〈適応性〉さんの柔軟な思考と即時的な行動力は重要です。不確実性の中でも状況を観察し、チームや組織がピンチになりかけてもチャンスの波に乗せることができます。
このように他者貢献できる素晴らしい資質ですが、どうにも振り回されてしまいやすいと感じている方は、一度ストレングスコーチを受けてみてください。「苦手なものは苦手」で済ます必要はありません。「Dancing in the moment」の感覚をつかみやすくなりますよ。
\ 資質の特徴から紐解くのでわかりやすい /