はい、ごめんください。Gallup 認定ストレングスコーチの小杉です。
個々の人々が持つ才能を見つけ、最大限に活用するためのツール「クリフトンストレングス®(ストレングスファインダー®)」の34資質について、これまでご紹介してきた情報も含めながら徹底的に解説していきます。
まずは、日本人に最も多いとされる資質〈最上志向〉(さいじょうしこう/Maximizer®)から。
※日本の設定で診断した方々に最上志向が多いというだけで、日本人=最上志向としてひとくくりにしないようご注意ください。
〈最上志向〉は、自分自身や他者が持つ強みを最大限に引き出すことに情熱を注ぎます。平均的な能力よりも、すでに優れている能力を好み、更に磨くことに価値を見出します。弱みを補強し平均点にするよりも、得意とする分野で強みを伸ばし、より尖った高みを目指すことに妥協しません。
- (今とてもいい感じだから)もっともっと伸ばしたい!
- (80点まで取れているから)100点を目指そう!
- (細かいところまで妥協せず)神は細部に宿る!
こんな態度を取ることが多いです。Gallup公式サイトはこちら(英語)👇
ストレングスファインダーの〈最上志向〉とは?
〈最上志向〉の資質が上位(10位以内)にある方は、平均的な能力よりも、すでに優れている能力を好み、更に磨くことに価値を見出します。弱みを補強し平均点にするよりも、得意とする分野で強みを伸ばし、より尖った高みを目指し続けます。
何かと比較しないことには「優れている」と判断できないため、比較して決定する才能でもあります。しかし、また別のものと比較して「こっちのほうが優れている」と判断し続けることになるので、基本的に〈最上志向〉は、簡単に満足することはありません。
だからこそ〈最上志向〉は、締切や関係者、予算や情報など、限られたリソースのなかで「最善を尽くす」天才でもあります。他を見たらキリがないからこそ、目の前のことを大切に磨き上げられるのです。もちろん、より自分の環境を変えていくこともします。
「人を動かしたい、状況を変えていきたい」といった変化させる欲求の強い影響力の資質のため、「(自分のこだわりをもとに)より良くしたい!」という思いが強いです。
影響力の資質については、こちらもあわせてご覧ください。
〈最上志向〉さんの口癖「せっかくなら」
「自分はそんなに一流を目指そうとか思っていないし……」「いや、そんなにすごい才能なんてないし……」という方が少なくないのも、〈最上志向〉さんあるある。口癖を振り返ってみると、こんなことを言ってませんか?
- 「これをもっと良くする方法はないかな?」
- 「こっちのほうが良いよ」
- 「私たちはプロとして一流の姿を見せるべきだ」
- 「満足したら、それで終わりでしょ」
- 「これが最善の方法だけど、まだなにかやれそう……」
- 「せっかく良いものなのに、この程度なのはもったいない」
- 「どうすればもっと効率的になるだろう?」
- 「やるからにはやるよ」
- 「ムダは嫌いなんだよね」
- 「こんなんじゃ、まだまだだ……!」
まずはご自身が〈最上志向〉の資質を持っていることを認めるところから始めましょう。
〈最上志向〉の感情的な特徴
(他と比較して)優れているモノ、コト、ヒトが大好きです。その「イイモノ」=「好き!」という感情に突き動かされるので、こだわりが強いことも少なくありません。好きなものには一切の妥協を許しませんが、逆に、自分が興味のないものはどうでもいいと感じやすいです。
例えば、資料作成にこだわる人ならば、余白の位置を0.1mm単位で調整したり、ホチキスを止める位置にこだわったりと、誰も気づかない部分で時間を費やします。とにかく、質を高めていきます。それでも「もっとこうしておけば良かったかな〜」と、やって終わりということはありません。
また、自分が認めている対象が貶されることに、怒りや悲しみを感じやすいです。確かに〈最上志向〉さんは審美眼がありますが、絶対的に良いとされるものは存在しませんので、(私にとって)が冒頭に付くことを意識しておきましょう。
尊敬できる相手とは目を輝かせてイキイキと活動しますが、尊敬できなくなったり、苦手(嫌い)な相手は、どこか見下した態度を取ってしまうことも。「好き嫌いを感じること」を否定する必要はありません。そのうえで「より良い態度や行動を選択する」ことが大切ですね。ストレングスファインダーの診断によって自覚できると、自己調整しやすくなります。影響力の資質は特にこの自覚が必要ですYO。
日本には〈最上志向〉さんが多い?
ストレングスファインダーの資質を Google で調べた際、「日本には〈最上志向〉が多いのか」と思われた方もいらっしゃることでしょう。それを知ったためか「〈最上志向〉の低い俺みたいなヤツは、日本では生きにくいんだろうなww」と茶化すケースも散見されます。
TOP5に含まれる資質の傾向を示した2018年12月のデータ(一般には非公開)では、〈最上志向〉が1位なのはグローバルの中でも日本しかなく、割合としては約33%を占めます。要するに、日本でストレングスファインダーを受けた人が集まると、統計的に3人に1人は〈最上志向〉を持っていることになりますね。世界全体で見ると〈最上志向は〉約13%なので、日本における〈最上志向〉の出現率は確かに多いと考えられます。
ただし、あくまで統計的なデータでしかなく、〈最上志向〉がTOP5にあるからといって「日本人らしい」わけではありません。資質の出方は、本人が持つ他の上位資質との組み合わせや環境によって千差万別ですから、「その国らしさ」を元にして得られるものは何もありません。まあ、飲み会のネタくらいですね。
ストレングスコーチの私でも確認できるデータは2018年が最新なので、Gallup社が資質別の統計データを非公開にしたのは、先に示した変な誤解が広がってしまったからなのではないかなと思うのです。
この、統計を元にしたレッテル貼りは、組織におけるストレングスファインダーの結果を一覧したときにも起こりえます。数が揃えば、マジョリティとマイノリティが見えてきます。もしそこで「だからアイツは浮いてるんだw」みたいな印象を持ったとしても、ストレングスファインダーはそのようなレッテル貼りに使うものではありません。解像度を高めれば、すべて異なる人間です。
特に〈最上志向〉は物事を(自分の基準に照らした)「良し悪し」で判断する傾向があるため、他者を判断する際には意識しておきましょう。チームメンバーの強みを見出し活かせる才能ですしね。
〈最上志向〉の才能を具体的に活かす
ストレングスファインダーで診断した時点での〈最上志向〉は、「パフォーマンスを最大化できる才能」でしかありません。つまり、可能性です。
その可能性が自分の中にあることを認め、無意識のパターンを振り返りながら手綱を握り、時には磨き、時には喜ばせることで、どんなときにも生産的なパフォーマンスを最大化できるようになります。この能力こそが「強み」です。
Gallupはサラッと、一生かけて超人を目指そうって言ってるようなものですが、仏教の悟りに通じるところもありますよねコレ。鬼滅の刃で例えやすいのですが、才能をうまく発揮できるのが「全集中の呼吸」で、Gallupで定義されている「強み」は「全集中の呼吸・常中」です。意識しなくても常に長所が発揮されるような状態。
そんなわけで、「強み」というよりは「才能の強み使い」を増やすことを目指したいので、ここでは強みに育ちやすい「長所」という言葉で説明します。ご自身の言動を振り返ったり、他者からのフィードバックをもらいながら、〈最上志向〉の長所を集めてみましょう。
特に〈最上志向〉は、意識していなければ満足できない事が多いので、なおさら「自分に長所なんて、ないのでは……?」と思い込みやすい傾向がありますが、そのように思っている時点で強みの種がある証拠ですよ。
〈最上志向〉の長所を磨いて強みにする
〈最上志向〉の資質を持つ人々は、自分の強みを最大限に活用することで、自分自身や他者のパフォーマンスを向上させることができます。そのため、自分が得意とする領域での仕事やプロジェクトに取り組むことが、最大の成果を生み出す可能性があります。
また、〈最上志向〉の人々は、他者の強みを見つけ出し、それを最大限に活用することで、チーム全体のパフォーマンスを向上させることができます。そのため、リーダーシップのポジションにおいても、この資質は非常に有用です。
たとえば、以下のような長所があります。〈最上志向〉は34資質の中でも特に複雑なので、以下はごく一部です。それぞれの資質には、単純計算でも140個の才能がありますし。
- アウトプットのほとんどが平均以上の評価をされる
- そのアウトプットを叩き台として更に改善し続ける
- スライドや資料のデザインが洗練されている
- 特定の分野に対する造詣がとんでもなく深い
- さまざまな人を尊敬している
- 周囲の人を巻き込んで、高い目標を達成する
- 細部にまでこだわり、仕事に妥協しない
- 常に成長し、向上したいという向上心
- 困難な課題にも挑戦し、克服したいという精神力
- 効率化やコストパフォーマンスを重視する
- 他者の才能や強みを見抜いて伸ばす
- 常にベストを追求する姿勢
- できないことよりできることにフォーカスする
- チームや組織の改善と進化に向けた情熱を持つ
- 他の資質の持つエネルギーを最大化する
総じてプロ意識が高いことが長所です。
長所と短所は表裏一体と言われているように、〈最上志向〉にも短所があります。それは、先に挙げたような長所が適切な範囲を超えて発揮されてしまうときです。たとえば、細部にこだわることで洗練されたアウトプットになりますが、細部にこだわりすぎてアウトプットできない、なんてことも起こりえます。
「過ぎたるは及ばざるが如し」という慣用句が示すように、もったいない使い方をしていると気づいたら、最適解を選んで進めば大丈夫です。
〈最上志向〉さんの強みを引き出す声かけ
- あとでもっと良くするから、[期日]までに叩き台を作っておいてくれない?(最善策を借りる)
- ◎◎さんがもっと良くするなら、どこを改善しますか?(審美眼を借りる)
- 先があるとして、[期日]には目指したいレベルはどれくらいですか?(目標の適切な設定)
- 尊敬する人はどんな人ですか?どんなところを尊敬していますか?(期待度の調整)
- 3ヶ月後に目指す、最高の状態は?(具体的な期日の設定)
「スケーリング・クエスチョン」というコーチングのメソッドも有効です。特に、自分ができているところを認めにくい〈最上志向〉さんには特に効きますよ。話の文脈に合わせて取り入れてみてください。
- 10点満点を最高の状態として、今は何点くらいですか?
- 10点満点は、どのような状態ですか?
- 今、①点まで取れている理由はなんですか?
- あと1点上げるとしたら、どんなことができますか?
ちなみに「さすが!」などと言われても「いえいえ、まだまだです……」と謙遜することが多いため、〈最上志向〉さんには、「ぜひ次もお願いしたいです」など、今後も期待する声掛けが効果的です。どんどん改善してくれます。
〈最上志向〉と他の資質との組み合わせ
ストレングスファインダーには他にも多くの資質があります。例えば、〈戦略性〉は、複雑な状況を把握し、有効な戦略を立てる能力を指します。〈公平性〉は、すべての人々が平等に扱われるべきだという強い信念によって行動する才能です。このような他の資質と〈最上志向〉が組み合わさると、どのような結果を生むのでしょうか?
〈最上志向〉とその他の資質が組み合わさったときの一例を挙げてみました。ただし、組み合わせの発揮の仕方は他の資質や経験にも大きく左右されるため、あくまで参考としてどうぞ。
- 最上志向 × 達成欲:良いものを更に良くするための時間を惜しまない。
- 最上志向 × 活発性:素早い行動により、強みを最大化するための新たな機会を見つけ出す。
- 最上志向 × 適応性:変化に柔軟に対応し、困難な状況でも最善の結果を出すことを追求する。
- 最上志向 × 分析思考:情報をとことん掘り下げて理解し、その上で最適な解決策を見つける。
- 最上志向 × アレンジ:多くの要素を組み合わせて最適な結果を生み出すための最良の計画を作成する。
- 最上志向 × 信念:深い価値観に基づいて最良の結果を得るために行動する。
- 最上志向 × 指令性:他者を導きながら、すでに優れている要素のさらなる改善を追求する。
- 最上志向 × コミュニケーション:とてもわかりやすい話術で情報を明確に伝える。
- 最上志向 × 競争性:常に最高を目指し、他者や自分自身の過去の成績と競争する。
- 最上志向 × 運命思考:人々や状況の間の繋がりを理解し、それらを最大限に活用する。
- 最上志向 × 公平性:プロジェクトの効率を最大化させる公平で一貫したアプローチをとる。
- 最上志向 × 原点思考:過去の経験や歴史を活用して最善の結果を得る。
- 最上志向 × 慎重さ:最良の結果を得るための最善の行動を、リスク評価によって選択する。
- 最上志向 × 成長促進:他者の能力を最大限に引き出し、その成長を支えることを追求する。
- 最上志向 × 規律性:厳格な組織と秩序を通じて最高の結果を達成する。
- 最上志向 × 共感性:他者の感情を把握して、最善の選択をおこなう。
- 最上志向 × 目標志向:目標達成に向けて、最短距離で一点集中する。
- 最上志向 × 未来志向:未来のビジョンに基づいて行動し、最高の未来を更新していく。
- 最上志向 × 調和性:人々の違いを調和させ、最善の結果を得るための平和な環境を作る。
- 最上志向 × 着想:創造的なアイデアの中でも、最高のアイデアに絞り込む。
- 最上志向 × 包含:精鋭部隊のための輪をつくり、受け入れる。
- 最上志向 × 個別化:個々の独自性や長所を理解し、把握する。
- 最上志向 × 収集心:本当に役立つ情報を集め、厳選した最高の情報を扱う。
- 最上志向 × 内省:深く深く思考し、様々な方向から追求し、洞察する。
- 最上志向 × 学習欲:第一人者から新しい知識やスキルを学び、自らの糧にする。
- 最上志向 × ポジティブ:肯定的な視点を持ち、伸びしろを応援する。
- 最上志向 × 親密性:相互に尊敬し合える信頼関係に基づいた活動を重視する。
- 最上志向 × 責任感:相手の期待に対する責任をまっとうし、120%の成果を出す。
- 最上志向 × 回復志向:改善を妨げる問題を解決し、さらなる改善を行っていく。
- 最上志向 × 自己確信:自身の能力に対する強い信念を持ち、最良の選択を迷わない。
- 最上志向 × 自我:多くの人に認められる偉業を成すべく活動する。
- 最上志向 × 戦略性:さまざまな選択肢から最善の道を瞬時に選び続ける。
- 最上志向 × 社交性:尊敬できる相手との出会いを求め続ける。
日常生活において、資質は1つのみで発揮されることはほとんどありません。もしあなたが上位に〈最上志向〉を持っていたら、特に一緒に出やすい資質や、お互いに刺激し合う資質を振り返ってみましょう。診断後に確認できるTOP5レポートを何度も確認したり、同じ〈最上志向〉持ちの方と読み比べてみたりしてください。〈最上志向〉さんは日々アップデートしているので、最初に読んだときとは違う印象を受け、何かに気づくかもしれませんよ。
まとめと余談:〈最上志向〉の最低ラインは平均点
〈最上志向〉さんは、自分自身や他者の長所に焦点を当てることがごく自然なことなので、一般的には、すでに高いレベルで機能しているシステム、プロセス、または人々を更に改良し、優れた結果を生み出すことに喜びを感じます。
そのためには研磨が必要だと考えるため、自分や他者に対して厳しいアプローチをすることもありますが、自分が認められないものにはそもそも興味を持ちません。パフォーマンスが平均以上のものを「良く」するのではなく、既に優れているものを「最良」にすることに時間とエネルギーを注ぎます。
なお、〈最上志向〉の資質が個々の行動、思考、感情にどのように影響を及ぼすかは、本人の他の資質や経験、そして周囲の状況や環境に大きく左右されます。この才能を持て余してしまっている方は、ぜひ一度、ストレングスファインダーを元にしたコーチングを受けてみてください。弊社でなくても、Gallup 認定のストレングスコーチなら〈最上志向〉の長所も短所も知り尽くしています。奥深くエネルギーの高い才能ですから、焦げ付かせてしまうのは “もったいない” ですよ。
\ 資質の特徴から紐解くのでわかりやすい /
さて、〈最上志向〉の資質に関してはエピソードが山のようにあるので、余談といってもどこから話したもんですかね……だいたいのことは上記にすべて書いてあるのですが、重ねてお伝えするなら「影響力としての側面」でしょうか。
上位資質を並べた際に、影響力の資質がTOP5に入ることはそれほど多くありません。そのぶん、影響力の資質が1つでも10位以内に入っていると、「影響力がないということはない」です。だからTOP5に影響力が2つ以上ある人はガンガン前に出たほうが輝きます。
日本や韓国では、この〈最上志向〉だけは上位に入りやすく、かなり大きな存在感を放ちます。ですが、この資質の持つ「こだわり」に気づいていない・認めようとしないと、「人を嫌いになりたくないのに、あの人を嫌う自分が嫌だ」とか「私なんて大したことないから、こんなことで怒ってもしょうがないのに」とか、いつまでもモヤモヤを抱えてしまいます。
影響力は比較的「自分が正しい」という立場を取ることが多いため、「相手が正しい、もしくは対等」という立場を取りがちな人間関係構築力が高めの方にとっては、葛藤が起きることも少なくありません。ストレングスファインダーを受けて、「このモヤモヤは〈最上志向〉のせいかー!!」と気づいて頭を抱える方も多いです。
34資質はどれも素晴らしい才能であり、〈最上志向〉も例外ではありません。葛藤に気づいたのなら、統合すれば良いのです。特に〈最上志向〉が何を「良し」としているのかは、VIAで価値観を明確にするとヒントになりやすいです。
私(コスギ)は〈最上志向〉を3位に持っていますが、良いものを見極める〈審美眼〉はそれほど高くありません。質の良さより〈ユーモア〉を良しとする傾向があり、そこを追求する姿勢が自分らしいと感じています。VIAは変化を前提とするツールなので、今後は変わるかもしれませんが、現在は楽しさを追求する自分の姿勢に納得しています。
ストレングスコーチングにVIAも取り込むようになったので、興味があれば一緒に軸を言語化していきましょう。