はい、ごめんください。Gallup 認定ストレングスコーチの小杉です。
一人ひとり固有の “才能” を理解し、それを活用するためのツール「クリフトンストレングス®(ストレングスファインダー®)」について、ひとつずつ徹底的に解説していきます。今回は〈包含〉(ほうがん/Includer®)です。
34資質の中でもよく「読み方がわかりにくい」と言われています(私も最初に調べました)が、「包む」「含める」と書いて「ほうがん」です。その言葉の示すとおり、他者を仲間に引き入れて孤独を作らない才能です。
〈包含〉さんは、すべての人を受け入れ、巻き込むような動きをするため、
- (輪の感覚が強いので)外れている人を見過ごせない
- (すべての人の存在を尊重するため)多様性を価値として受け入れる
- (居場所を尊重するため)排除や偏見を避ける姿勢を持つ
こんな様子を見せるのは〈包含〉さんならでは。Gallup公式サイトはこちら(英語)👇
ストレングスファインダーの〈包含〉とは?
〈包含〉さんは、多様性こそが「輪」の力になるという姿勢で新しい視点を歓迎し、招き入れます。大きな目的のために全員の声を尊重するのは合意形成が目的ではなく、個別の意見から得られる可能性を大切にするためです。すべての他者を尊重する姿勢によって、メンバーは主体性を促されます。
転じて、集団やコミュニティの中で誰もが自分の居場所を持てることを尊重しています。〈包含〉さんは、自然と外れている人や無視されがちな人々を気に掛け、それらの人々をグループや活動に巻き込もうとする傾向があります。その結果、〈包含〉さんは多様性を強みとして活用し、様々なバックグラウンドや経験を持つ人々の意見や視点を大切にすることで、より包括的で寛容な環境を作り上げることができます。
「他者との関係を築いて一緒に取り組みたい」といった欲求を持つ人間関係構築力の資質の中でも、〈包含〉さんは特に「排除されている人や孤立している人を取り込んで、一緒に取り組みたい」という傾向が強いです。全員で輪を作って、和をもたらす才能ですね。
〈包含〉さんの口癖「みんな」
〈包含〉さんの言葉や態度には、常に人々を受け入れる姿勢が見て取れます。それほど、〈包含〉さんにとって「排除しないこと、誰もが参加すること」は大切なことなのです。
- 「このプロジェクトは、みんなで一緒にやりましょう!」
- 「その意見も大事だと思います」
- 「私たちのチームはみんな大切だから、それぞれの意見を聞きたい」
- 「どんな小さな声も大切にしたいから、何かあったら言ってね」
- 「あなたも参加しませんか?みんなで楽しくやれると思いますよ!」
- 「えっと、◎◎さんはどうしましたか?」
〈包含〉さんは、外れている人や声の小さい人々を自然と気に掛け、そんな人々の意見や参加を歓迎します。そんな態度は顔にも表れており、目尻の下がった、菩薩のような微笑みが特徴的です。
とても優しく穏やかな印象を受けますが、「誰一人として取り残さず、すべての人が参加し、誰もが属する場があるべき」という価値観が軸にあります。そのため、時には強引な勢いで輪の中に人を引き入れることがあるほどです。自分の視界に孤独な人を作りたくないという思いは、信念といっても過言ではない強さがあります。
〈包含〉の感情的な特徴
〈包含〉さんは、感情的にも非常に寛容で受容的です。どんな人でも、その違いや特性を心から受け入れて仲間を構成する「人の輪」として歓迎するため、他者の感情や立場を尊重することが多いです。「輪の中に多様性を必要とする」というよりは、「輪の中に多様性が生まれるのは当然」という感覚が強いですね。
そのため、人々の間に意図的な排除や孤立が起きている状況に敏感です。そういった場面に遭遇すると、深い悲しみや不快感、焦燥感でうろたえてしまうことがあります。特に、自らが関わるグループやコミュニティで偏見による孤立が生まれるのを目の当たりにすると、その責任を自らに感じてしまうことがあるほどです。
また、〈包含〉さん自身も孤立を恐れているため、何らかのコミュニティに入ったり、自分でグループを作ったりして、自分はもちろん他者にとっても大切な「居場所」を確保します。居場所という大きな「輪」では、すべての人の意見や役割が尊重され、安心で安全な場として小さな「輪」が生まれる、そんな場を常に望んでいます。
上辺どころか、根源的欲求として包括された環境を望む〈包含〉さんは、チームビルディングの理論を感覚的に実践してしまうため「天性のチームビルダー」と呼ばれています。チームワークを促進してくれる存在ですから、組織としては喉から手が出るほど欲しい人材なのではないでしょうか。もちろん、ストレングスファインダーを採用に使ってはいけないし、〈包含〉を持っているからといって丸投げすればよいものでもないですよ。
〈包含〉は、おせっかい?
上述のとおり、〈包含〉さんは他者を気にかけ、巻き込み、サポートしたい思いが強いです。ですがこの思いが強すぎて、巻き込まれたいニーズを持たない人をも巻き込んでしまうことがあります。
特に、〈内省〉を上位に持つ人は自らの思考に没頭する傾向が強いので、あえて独りの時間を必要とします。それに気づかない〈包含〉さんが「こっちにおいでよ!」と誘っても価値観がぶつかります。同じ空間で別々のことをしているような状況ならともかく、チーム行動を強制させられる(と感じさせる)状況は、お互いに幸せにはなりません。
また、〈共感性〉を上位に持つ人は他者の中にいると気疲れしてしまうことがあるため、自分専用の時間を必要とします。この場合も「ひとりにしたくない!」と考える〈包含〉さんが近くにいると、なかなか疲れが取れません。もちろん、関係性によっては一緒にいたほうが回復することもあるため、ケースバイケースです。
もし「余計な親切なんだよなあ……」とモヤモヤするときは、上記のようなことが起きている場合でしょう。本来、天才的な配慮の心を持つ〈包含〉さんですが、孤独を恐れるあまり、他者のニーズを犠牲にしてしまう「おせっかい」を焼いては本末転倒です。
〈包含〉さんは、人々を受け入れ、包括することを求めますが、必ずしも同調を求めるわけではありません。多様性を受け入れ、異なる背景や価値観を持つ人々を特定のコミュニティに結びつけることを大切にします。つまり「居場所」をつくっているのです。その居場所が、相手にとって必要ない場合もありますよね。
誰でも彼でも輪に入れるのではなく、併せ持つ上位資質と合わせて「多様性」を見極めていただけたらと思います。そして、〈包含〉さん自身の持つ「輪」の定義を深めてみてください。支援はときに弱者を生みますが、多様性の概念には強者も弱者もないですし。
〈包含〉の才能を具体的に活かす
ストレングスファインダーの診断結果は、5,000種類以上の才能の塊を34個に分けた「資質」ですから、「強み」というわけではありません。〈包含〉は「他者を仲間に引き入れる才能」ですが、チームワークの地力があるため、組織やコミュニティの中で長所を発揮して活躍できていることも多いかもしれません。「確かに、いつも誰かと活動している」という言葉はよく聞きます。
では、そんな〈包含〉さんの長所を生産性の高い「強み」として磨いていきましょう。
〈包含〉の長所を磨いて強みにする
〈包含〉さんの長所は何よりも、多様性を受け入れ、あらゆる人々を巻き込む力にあります。このような才能が、長所として具体的に発揮されると、こんなこと(あくまで一部)が起こります。
- 新しいプロジェクトチームを組む際に、異なる背景や専門性を持つメンバーをバランスよく選ぶ。
- 異なる文化や価値観を尊重しながらコミュニケーションを取り、プロジェクトを進行する。
- 疎外感を抱えているメンバーの話を聴き、参加させることでチームの一体感を高める。
- ミーティングで全員の意見を求め、それらをまとめて統一的な方針を示す。
- プロジェクトに失敗しても、チームを包括して励まし、再スタートを切る。
- 異なる部署やチーム間の連携を促進し、シナジーを生み出す。
- クライアントの価値観を尊重しながら、お互いをチームとして信頼関係を築く。
- 新しい取り組みを進める際に、多様な視点を取り入れることで一体感をつくり、成功へと導く。
- 意見の衝突が起きた際に、中立的な立場を取りながら各意見を傾聴し、解決へと導く。
- チームの目標設定時に、多様な意見や視点を取り入れ、全員で達成可能な目標を設定する。
- 人々の様々な動機や価値観の相互理解を促し、チームのモチベーションを高める。
- お互いの違いを理解し、尊重する文化を創り上げることで、組織全体の生産性を向上させる。
- 異なる年代や世代の人々を巻き込むことで、多様な視点や経験を生かしたプロジェクトを進める。
- マイノリティの方々が抱える問題やニーズを理解し、それに対応するソリューションを提案する。
- 異なるバックグラウンドを持つ人々が協力して取り組むことで、より強固なコミュニティを築く。
- 社会的弱者を取り巻く環境やシステムを改善するため、公共的な活動を行う。
このような〈包含〉さんに見られる長所は、相手、家族、クラスメイト、プロジェクトチーム、地域、社会など、主語が大きくなってもまとめていける力を持つことがわかります。異なる背景を尊重するため、複雑な事情を抱えた家庭も、世界中のメンバーも、〈包含〉さんは巻き込んでいくことができます。
そこには上限関係ではなく、お互いに対等な関係の「輪」となっており、輪を構成する人々に存在する「違い」が生まれます。お互いに知恵を出し合い、補い合っていける関係性をつくるのが〈包含〉さんの真骨頂。
〈包含〉さんの強みを引き出す声かけ
〈包含〉さんの才能は、チームにとってとても有効で貴重なものです。そのためにも、適切なメンバーを巻き込み、活動を促していけるようサポートすることが大切です。特に人間関係構築力の才能は、「他者の助けになりたい」「貢献したい」という欲求が強いので、素直な感謝の気持ちを向けられることが喜びです。裏表のない率直な感謝、です。
- ◎◎さんが巻き込んでくれたおかげで、私の居場所が見つかりました(巻き込み力に感謝)
- ◎◎さんの包容力のおかげで、私も挑戦できます(包容力に感謝)
- メンバーの中に、気になる人はいますか?(他者に対するアンテナを借りる)
- ◎◎さんの感じている「チーム感」を、私たちに共有してもらえませんか?(アンテナを借りる)
- 困っていることは、私たちも一緒に考えさせてください(一体感をつくる)
〈公平性〉の記事でも言及した「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」の概念のなかでも「インクルージョン」をナチュラルに行う才能ですから、個性を活かすことを大切にしている組織なら中心的に活躍してくれます。
才能は、本人も無意識で言語化できないという特性があるため、ストレングスファインダーなどを使ってメンバーの個性を見える化して共有し、組織やチームの目的に向かって包括していけるといいですよね。
〈包含〉と他の資質との組み合わせ
ストレングスファインダーの結果には、〈包含〉を含めて34の資質があります。たとえば〈ポジティブ〉は、細かいことを気にせず機嫌が悪くならない才能ですし、〈指令性〉は主導権を握って大勢の人を統率できる才能です。このような他の資質と〈包含〉の特徴が組み合わさると、「全体包括力」が生まれます。
〈包含〉と合わせた上位資質が組み合わさると、どのような相乗効果になるかの例を挙げてみました。状況に応じて資質の反応は変わるため、あくまで参考としてください。今回は、チーム活動を前提にした場合を想定しています。
- 包含 × 達成欲:チームで目標を達成するために、手が回らないタスクをすべてこなす
- 包含 × 活発性:新しいプロジェクトを始めるためのチームをつくる
- 包含 × 適応性:臨機応変に仲間を巻き込み、チームの輪を広げる
- 包含 × 分析思考:メンバーの小さな意見も取り入れ、本質的な共通点を見出し共有する
- 包含 × アレンジ:チームのメンバー間でタスクをやりとりしながら、一丸となって取り組む
- 包含 × 信念:誰も迫害することのない信念をもって、公益性の高い活動を先導する
- 包含 × 指令性:チームに明確な主導権を持たせ、一丸となって進めていく
- 包含 × コミュニケーション:メンバーが理解できるようにわかりやすく語り、方向性を強固にする
- 包含 × 競争性:ライバルのチームに勝てるよう、ゲーム性を取り入れてチームに一体感を醸成する
- 包含 × 運命思考:縁がつながった相手をチームに引き入れ、多様性を活かす
- 包含 × 公平性:チャンスやリソースを享受して活かせるよう、誰もが参加できる環境を作る
- 包含 × 原点思考:チームが共有できる原点を大切にして、新しいメンバーにも共有して歓迎する
- 包含 × 慎重さ:構成メンバーを考慮したうえで、多様な意見を慎重に取り入れ検討する
- 包含 × 成長促進:成長を望む新たなメンバーを歓迎し、互いに成長を実感できるチームをつくる
- 包含 × 規律性:多様性を日常的な仕組みに取り込んだうえで、それぞれのはたらきかたを尊重する
- 包含 × 共感性:メンバーの感情を理解しながら、安心して参加できる関係を築く
- 包含 × 目標志向:チームの目標に向かって、誰も取り残さずにゴールを目指す
- 包含 × 未来志向:多様性を包括した未来のビジョンを描き、チームの意見も取り入れながら実現していく
- 包含 × 調和性:チーム内に意見の相違が出ても、それぞれの意見を元にして調和を図る
- 包含 × 着想:新しいアイディアをチームに提案し、意見を聴きながら巻き込んでいく。
- 包含 × 個別化:メンバーそれぞれの背景や特性をチームで共有し、相互尊重のチームを築く
- 包含 × 収集心:メンバーの意見だけでなく、紐づく情報を収集し、チームに共有する。
- 包含 × 内省:各々の時間を尊重し、離れていてもお互いの考えを理解し合えるチームを築く
- 包含 × 学習欲:チームに学びの機会を提供して、お互いに学び合う環境をつくる
- 包含 × 最上志向:向上心のあるメンバーで、一丸となって高みを目指す
- 包含 × ポジティブ:他者を勇気づけるためのチームを作り、チームとして社会を照らす
- 包含 × 親密性:深い信頼関係に基づいたチームをつくり、長期的に一緒に活動していく
- 包含 × 責任感:チームとして目標を完遂することを自らの役割とし、プロジェクトを完遂する
- 包含 × 回復志向:多様性によって生まれる問題を解決し、チームでの活動を進めていく
- 包含 × 自己確信:各々の意見や決定を尊重し、それぞれの得意を活かして進めるチームを築く
- 包含 × 自我:チームの中で存在感を示しつつも、チームが評価されるように活動する
- 包含 × 戦略性:メンバーの多様な視点を把握しながら、戦略を調整して共有する
- 包含 × 社交性:新しいメンバーを積極的にチームに巻き込み、誰もが参加できる場をつくる
こうしてみると、外部からメンバーを入れたい〈包含〉さんもいれば、チームを活性化したい〈包含〉さんもいますね。外向的な〈包含〉さんは、外から人が入ってこれるコミュニティをつくり、内向的な〈包含〉さんは、目的を共にするチームに所属するメンバーに参加を促すような動き方が得意なのでは。
上位に併せ持つ資質によって、感情も思考も行動も変わるため、ストレングスファインダーの診断後に確認できるレポートにある「クリフトンストレングス上位資質(TOP5)レポート」を参考にしてください。
まとめと余談
〈包含〉さんは、本当に穏やかな雰囲気でニッコリしていて、すべての人を受容する姿勢ですが、「誰ひとり取り残さない」という強い信念を持っています。人の存在を肯定し尊重しているので他者を嫌いになることもなく、必ず役割があると信じています。まさに「大きな器で居場所をつくる才能」といえます。
先日、〈包含〉を上位に持つ方にTwitter(X)でスペースを開いて伺ったのですが、やはり「みんな」というキーワードが頻発していました。巻き込んでいくのは、輪に入らない人が気になるからだと。「誰もが相談できる場をつくりたい、そうすれば孤独にならないから」と仰っていたのが印象的でした。
実は私(コスギ)自身、〈包含〉さんに助けられていました。フリーランスとして独立し、スムーズに活動できたのは、何よりもコミュニティに巻き込まれたおかげです。まさに、私自身が私らしく活躍できる「居場所」をつくってもらえました。そこでは業界トップクラスの方々ともご縁をいただき、私の〈最上志向〉を刺激され、今の私があります。あとからストレングスファインダーを共有してもらったら、そういうことだったんだなと。
多様性を尊重する〈包含〉さんがくすぶっているのは、とてももったいないです。組織の損失です。居場所によって助かる人が、世界にどれだけいるかと考えたら、世界の損失といっても過言ではありません。そんな、類稀なる巻き込み力をどうやって活かしたら良いか迷っていたら、私を巻き込んで、その世界観を共有してください。
\ 資質の特徴から紐解くのでわかりやすい /
余談・DAN・DA・DAN☆
私自身、実はそこまで深く理解できていない〈包含〉の資質なのですが、TOP5に持っている方は総じて穏やかさがあるのですよね。記事にもありますが、菩薩のように寛容なんです。
〈社交性〉さんは他者に近づくのが得意ですが、影響力系だけあって、テンションが高まるというか、交感神経が刺激されるというか、楽しくアガる雰囲気があります。〈包含〉さんは、相手に敵意を抱かせない雰囲気があって、一緒にいて落ち着くような、副交感神経が刺激されてリラックスできるような、フッと気が抜けるような雰囲気があるんですよね。母性かな?
だから、「リラックス」には「スゴイ」という概念が合わないように、〈包含〉のスゴさみたいなものを考えようとしても、ピンとこないんですよね。この認識を超えた概念のレベルで発揮しちゃうのが、〈包含〉のとんでもない天才性なのです。
本人が一番気づきにくいのかもしれませんが、振り返ればいつも輪ができているのではないでしょうか。私は割と一人で好きなように生きていますが、〈包含〉さんの輪に入れてもらえると、なぜだか本能的な安心感に包まれます。もふもふ。